今年還暦を迎えた磯野貴理子は、今から3年ほど前から“野鳥の観察”にハマり、2022年10月には専門的な知識を身につけるべく、『日本野鳥の会』にも入会した。鳥の姿を見るだけで喜びがあふれ、充実した毎日をおくっているという彼女に、バードウォッチングの楽しさについて聞いた。【前後編の後編。前編を読む】
『日本野鳥の会』入会で世界が広がった!
『日本野鳥の会』は、野鳥や自然の素晴らしさを伝えながら、自然と人間との共存を目指して活動する、日本で最古にして最大の自然保護団体だ。1934(昭和9)年に設立され、今年で創立90周年を迎えた。
「会が主催する『探鳥会』というバードウオッチングに参加するんですけど、そこでいろいろな鳥と出合って、名前や生態を教えてもらいました」(磯野貴理子・以下同)
探鳥会は、全国で年間約3000回開催されており、延べ約7万人が参加しているという。参加費数百円を払えば、野鳥の会会員でなくても参加できるという。
「私は最初、双眼鏡を持っていなかったんですが、会員さんがスコープ(望遠鏡)を持っていて、そのレンズの枠内に鳥を入れたら、“いま鳥入りました”といって見せてくれるんです。だから、手ぶらでも楽しめて本当におすすめ。
そして締めは、“鳥合わせ”といって、鳥の数を数えて、リーダーと答え合わせをするんです。これがすごく速い。“いま38羽ぐらいでしたね”とか、塊で数えているんです。その技術が紅白歌合戦で生きているんですね。
数を数えることでデータをとっているわけです。ここの森や干潟には、これだけ野鳥がおり、巣もあるというデータが、自然と共存した開発に向けての資料となる。絶滅危惧種を守ったり、生態系を守ることにもつながっていて、野鳥の観察が自然保護につながるんです。素敵でしょ?」
野鳥の会の会員は鳥だけではなく、自然界についてのさまざまな知識が豊富で、聞けば親切に教えてくれるのだそう。
「たとえば、“あの鳥は、この植物の実が好きなんだよ。でも今年はあまり食べていないから、おいしくなかったのかもね”なんておっしゃる。だから私も、その植物の名前や特徴を覚えるように。同様に、鳥が食べるから昆虫についても勉強するようになり、そうするうちに食物連鎖や生態系にも興味が出てきて、自然の循環について意識するようになりました。
ベテランの会員さんが、“鳥を知るとは地球を知ること”とおっしゃっていて私、感銘を受けてしまいました」
最初は野鳥を見ているだけで満足していたが、そのうちきれいに撮影したくなり、一眼レフカメラと望遠レンズを購入。羽の細かいところまで撮れるようになると、撮影にもハマっていったという。野鳥への関心に端を発し、どんどん世界が広がっていった。