6年ぶりのリーグ優勝に向けて奮闘を続ける広島。好調のチームを率いるのは就任2年目の新井貴浩監督(47)だ。“天然キャラ”の現役時代からは誰も想像できなかった彼の「名将の資質」とは。チームの雰囲気はここ数年で最も良いという。広島番記者が語る。
「ロッカーでは選手の笑い声が絶えない。一方、ホームでの試合後は選手たちが居残りでバットを振っています」
そうしたなかで新井監督は、現役時代の明るいキャラクターそのままに、得点したら派手なガッツポーズを繰り出し、勝利の瞬間は選手よりも早くベンチを飛び出す。ただ、新人の頃はプレーが雑で「粗ゐサン」という呼び名もあったくらいで、チーム全体を見渡す指揮官として勝ち星を重ねるイメージは持ちにくかったが、結果は出ている。新井監督のルーキーイヤーに広島監督だった達川光男氏はこう言う。
「新井監督は、野球のこと何もわからんのよ。でも、それがチームを勝たせる秘訣につながっているから面白いよね」
どういうことなのか。
野球以外のフォローが大事
達川氏は「とにかく藤井(彰人)ヘッドコーチを連れて来たことが大きいよ」と続ける。
「(2022年まで)阪神のバッテリーコーチだった藤井はライバルの阪神を知り尽くしているし、新井監督とは真逆で、野球のことはなんでも知っとる切れ者。現役時代に阪神でめちゃくちゃ仲がよかった同学年の藤井を連れて来て、選手起用や作戦面など“野球のこと”は藤井ヘッドにすべて任せる。バッティングに関してもやはり同学年の朝山(東洋)打撃コーチに一任。自分は選手のフォローと報道陣対応に徹する。変に口を出さず、それでチームが上手く回っている。
あとは選手がミスしたり、打てなくても絶対に怒らない。“一生懸命やっている選手に文句を言う必要はない”というスタンスを貫いているね」