母とはスーパーで買い物 父とは公園で木登り
そんな家だったので、舌だけは一丁前になっちゃって。しょっちゅう、お母さんの買い物にお供していました。毎回、買い物について行けるのは、三姉妹のうちひとりだけ。その間は母を独占しておしゃべりができるし、スーパーで自分の好物をお願いすることも。ずっと家にいると、仕事から帰ってきたお父さんと公園に行かなきゃならないんです(笑い)。父は山登りが好きだったので、私にもやってほしかったんでしょうね。よく、木登りをさせられたりしました。
母に「ふぐのお刺身が食べたい」と生意気なリクエストをしたこともありましたね。自分で言っておきながら、まあ、買ってくれないだろうなあ、なんて思っていたら次の日、家に私しかいない瞬間を見計らって「真希、おやつ食べる?」と、なぜか午後3時にふぐ刺しが出てきました。スーパーで売っているふぐ刺しだといっても、家族全員の分を買ったら、大きな出費だろうし。私みたいに、姉たちも弟もおねだりしていたんでしょうね。お母さんは時々、それぞれにこっそりやってあげていたんだと思います。
堂々とリクエストできて、しかも家族全員で食べられたご馳走が茶碗蒸しでした。小さな器でそれぞれじゃなくて、食卓の真ん中に大鉢でドン! お玉でそれぞれ好きなだけすくって、おいしかったな。
お豆腐じゃないですけど、いまの茶碗蒸しは絹みたいに滑らかじゃないですか。お母さんの茶碗蒸しは、木綿みたいにしっかりしていました。大好きなぎんなんもたっぷり入っていて。
気丈でぜんぜん涙を見せないお母さんでしたけど、モーニング娘。のオーディションに合格したとき、初めてたった一度だけ私の目の前で泣いたんです。うれしいと驚きが入り混じったような表情でぽろぽろって。あの涙は忘れられません。