台風10号による突風の影響で、外壁や窓ガラスなどに被害を受けた建物(時事通信フォト)

台風10号による突風の影響で、外壁や窓ガラスなどに被害を受けた建物(時事通信フォト)

 こうした映像は、貴重な災害記録ともなるため、ネットに災害の映像を上げたことで後に国の機関や自治体、大学などから映像提供を求められるなどの例もあるという。そういう意味では、「視聴者映像」ならではのメリットもあるが、リスクに関しては「未知数だが小さくない」と民放テレビ局の報道番組ディレクターは危惧している。

「事件や事故の瞬間やその直後の様子を捉えた視聴者映像はインパクトも強く、視聴者にとっても報道機関にとっても非常に貴重です。しかし、数年前に起きた台風のニュースで使われた視聴者映像は、暴風の影響で撮影者に向かって飛んでくる資材を撮影したものでしたが、ギリギリまで逃げずに、しかも笑いながら若者が撮影しているような内容で物議を醸しました。また、九州で起きた別の大雨のニュースで使われた視聴者映像は、周囲が冠水していく中、逃げたり移動することなく撮影し続けた内容で、一部の視聴者から”危なすぎる”と意見が寄せられたと聞きます」(報道番組ディレクター)

 災害時の視聴者映像として放送されたどの動画も、放送前に視聴者が自分のSNSアカウントに投稿していたものだ。もともと再生回数は数百回だったが、テレビニュースで取り上げられることで、再生数は百万オーバーに急上昇する。テレビ放送の効果を狙って、わざと危険な場所、場面を撮影しようとする一般市民が出現する恐れについて、関西キー局に在籍し、SNS取材担当を経験した別の報道番組デスク(30代)は出来るだけの対策を考えていると説明する。

「たしかに指摘のような危険な映像はありますが、最近ではそうした映像の撮影者には接触しないよう、報道側が配慮するようになっています。テレビで使われることを目的に、もしくはSNSで多く見られるために、そんな意識で自ら積極的に撮りに行く視聴者が増えたためです。万一、撮影者に事故が起きて、テレビ局に渡すために撮りに行った、などということになったら大変です」(報道番組デスク)

もっとバズりたくてテレビ放送を期待する人たち

 気になるのはネットユーザーの自己顕示欲だけではない。都市伝説のように言われている、金がほしくて撮りに行く、テレビ局などに映像を売るために危険を冒す、というのは本当に起きていることなのか。それについても、賞金稼ぎのようなことは実現不可能だと続ける。

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