「報道の場合、原則として視聴者映像に金銭が払われることはありません。あっても500円のクオカードか局のロゴ入りボールペンが送られてくるくらい。それでも映像を撮りたい、テレビ局で流してほしいと思うのは、やはり見られたい、SNSでバズりたいという気持ちがどこかにあるからだと思います」(報道番組デスク)
報道機関に映像を提供することで直接の報酬は得られないが、報じられたことによって自分の投稿がバズれば、別の方向から報酬が発生する可能性はあると付け加える。
「最近のSNSは見られれば、すなわちバズれば、それを収益につなげる仕組みがうまくできています。迷惑系ユーチューバーとは同列にはできませんが、災害映像もよく見られるのでフォロワーの獲得にも繋がる。様々な形で換金できる可能性があるのを見越して、視聴者映像をアップしているユーザーとテレビ局の間を仲介することを仕事にしようとする業者も登場するほどです」(報道番組デスク)
海外では実際に、大きな事件の瞬間を捉えた視聴者動画がテレビやニュースサイトで頻繁に使われ、撮影者が巨万の富を手に入れた例もあるにはあるが例外的な存在だ。だが、それはネットインフラが充足化する以前の話だ。最近では、高額のギャラや謝礼が支払われることはほとんどない。
「事件の一部始終を撮影し、ネットにもあげていないという視聴者映像を買い取った話がないわけではないが、よくて数十万円の買い取りです。SNSに載せて、何百万回再生された、となっても、これも多くて数万から十数万円程度の収益です。確かにお金になることには変わりありませんが、言われているほどの収入は得られない。このような賞金稼ぎのような人は、言われているほどいません。そもそも、最近の視聴者映像の撮影者や投稿者は、お金のことが念頭にある人はほとんどいないでしょう」(報道番組デスク)
災害時のSNS投稿は、行政による発表や報道よりも早く、被害の実態を知ることができる貴重な情報源だ。2011年の東日本大震災以降、私たちはSNSによる分かち合いの利便性を何度も実感し、様々な場面で活用してきた。その一方で、多くの人が頼っている現実を、利己的な目的のために使おうとする人が出現する。利便性を阻害しないようにSNSとどのように付き合い、報じていくのか。報道機関も試行錯誤を続けている。