議会を解散した場合は県議会議員選挙が行なわれ、新しい議会で再び不信任が決議されれば、ようやく知事が失職する。だが、不信任決議を可決する壁がそもそも高い。
決議は兵庫県議86人が全員出席した場合、4分の3にあたる65人以上の賛成が必要となる。現在、維新の会が4分の1にあたる21議席を持つ。仮に維新が動かなければ、自民党から日本共産党、無所属議員まで一人残らず賛成する必要があるのだ。
不信任決議が難しい理由はそれだけではない。
「辞職させたら、次の知事選で誰を候補者として担ぐか決めないといけない。特に前回の知事選で斎藤知事を担いだ政党は、人選が固まらないうちは動きにくいのが実情でしょう」(上脇氏)
もう一つの「リコール」は県民が動く方法だ。一定数以上の有権者の署名を集めたうえで住民投票を行ない、過半数が賛成すれば知事は失職する。人口が多い自治体の場合は特殊な計算式が用いられ(注:有権者総数が80万人を超える場合は「80万を超える数の8分の1と40万の6分の1と40万の3分の1を合計した数以上」の署名が必要になる)、兵庫県の有権者数は約450万人のため、リコールには約66万人もの署名が必要となる。
「県全域で大規模な署名運動を展開する必要があり、相当の組織力が必要になる。2020年に愛知県の大村秀章氏に対するリコール署名が集まりましたが、署名の8割以上が偽造と判明した」(上脇氏)
“無敵の人”に立ち向かうのは簡単ではない。
※週刊ポスト2024年9月20・27日号