〈試験会場のホテルに到着し、意気揚々と面接会場に入った私は、いきなりすくみ上がってしまった。(中略)それまで人前で緊張することなど皆無だった私が、松下塾長の眼光に圧倒され、自分をアピールするどころかほとんど喋れないままに時間が経過してしまった。背中を冷たい汗が流れるのを感じていた。
(中略)がっくりと肩を落として面接会場を出た私に、松下政経の職員がカメラを向け。反射的にニカッと笑って写真に納まった〉
面接の場で政治・経済に関する持論をほとんど語れず肩を落とした高市氏だったが、数日後に合格通知が届く。なぜ受かったのかわからず不思議に思うなか、後に塾の職員から裏話を聞かされる。
〈松下塾長は、リーダーの要件の一つとして、『運の良さそうな顔』と『愛嬌のある顔』を挙げておられたというのだ。一次選考と二次選考の段階で学力や体力や時事問題への考え方は判定できているわけで、三次選考の目的は、『松下塾長が、受験生の“顔”を見ること』だったのだそうだ。
面接直後に職員が撮った写真は、その夜、ホテルのベッドの上に並べられ、松下塾長が指差しながら合格者を決められたのだと聞かされた。結局、緊張の余り汗をかきかき困っていた顔か、カメラに向かってニカッと笑った顔で選んでいただけたらしいと納得した〉