男性の父親がやりとりした外国人女性は、もちろん実在しない。詐欺師による、なりすましである。その女性から猥褻な写真を送られるなどするうちに丸め込まれ、100万円が当選したと告げられると、ありもしない事実なのに心が躍ってしまった父親が騙されてしまったのだ。問題の自称外国人女性とのやりとりは、まだ続く。
「その後、相手とのやりとりを私が行ったんです。すると、当選金を引き出すためには3万円の手数料がかかるので、ギフトカードを買ってシリアルナンバーを送るようメッセージが届きました。拒否すると態度が豹変し”あなた(父親)の(半裸の)写真が公開される”と脅してきたのです」(公務員の男性)
男性は即座に警察に相談。金銭は盗られていないものの、父親の半裸の写真を使って脅迫されていると訴えたが「被害届を出しても受理できない」「捜査は難しい」と、調書すらまともにとられなかったと憤りを隠さない。
「金は取られなかったが、親父の個人情報は相手にバレているし、毎日気が気でない。一応、警察が定期的に見回りにはきてくれているものの、親父はすっかり意気消沈している。親父に非がなかったわけではないが、被害があっても言い出せないような状態に陥れられる現実があることを、皆さんにも知ってほしいんです」(公務員の男性)
着物が好きだというと、着物姿の写真を送ってきてくれた
男性が狙い撃ちにされる「セクストーション」の被害件数は、調査結果があるわけではないため具体的なことがあまり分かっていない。だが、高齢男性を狙った詐欺事件を取材してきた大手紙社会部記者(30代)は、犯罪統計にまとめられていない被害が相当数あるのではと疑っている。
「高齢男性がSNSで知り合った女性を自称するユーザーに数千万を騙し取られたという事件は、あまり話題になりませんが全国各地で相次いでいます。ニュースや新聞報道では詐欺被害に遭った、としか報じられませんが、警察に取材すると、幹部が”オフレコ”と前置きした上で、被害男性が自身の猥褻な写真を相手に送ってしまっていた、という事例は少なくない。
これだけ詐欺の情報が報じられているから、単純なウソに騙される人は減っていますが、一方で、こうした脅迫を受けて追いつめられ、金を支払ってしまった被害者は増えている。被害者がなかなか言い出せないため、被害の実情把握は難しいのです」(大手紙社会部記者)
埼玉県在住の自営業の男性(40代)も「セクストーション」の被害に遭い、300万円を超える金を奪われてしまったと嘆く。
「東南アジア人女性だと自称するその人とは、Facebookで、向こうから友達申請が来たことで知り合いました。メッセージのやり取りをするようになると、向こうから下着姿の写真とともに”会いたい”とか”あなたのセクシーな姿を見たい”と言われるようになったんです」(自営業の男性)