主人公・月岡夏役の目黒蓮(時事通信フォト)

主人公・月岡夏役の目黒蓮(時事通信フォト)

 ただ、話題性が高かった一方で、第1話放送中から「ありえない」「重すぎる」「ホラー」などの否定的な声があがり続けていたのも事実。なぜそのような声もあがりながらも最終話まで話題性をキープできたのでしょうか。 

「あえて物議を醸す」鋭いセリフ 

 ネット上の話題性につながった最大の立役者は脚本を手がけた生方さんで間違いないでしょう。当作に限らず、連ドラデビュー作の『silent』、2作目の『いちばんすきな花』でも、ネット記事やSNSのコメントが量産されるなど、記者や視聴者が書きたくなるような物語を手がけています。 

 特に今作で記事やコメントの量産につながったのは、物議を醸すように放たれる鋭いセリフ。これまでを振り返る意味も含め、下記に主なものをあげてみましょう。 

 主人公・月岡夏(目黒蓮)の元恋人・南雲水季(古川琴音)の「夏くんは堕ろすことも産むこともできないんだよ」「大丈夫だって。責任感じないでよ。夏くんまだ親じゃないんだから」 

 水季の母・朱音(大竹しのぶ)の「妊娠も出産もしないで父親になれちゃうんだから」「彼女さんが一番巻き込み事故って感じよね」「あの子、『私、お母さんやれます』って顔してた」「さわらないで。家族でやるから大丈夫です」 

 水季の同僚・津野晴明(池松壮亮)の「弱いもんですよ。そばにいただけの他人なんて」「南雲さんいたときもいないときもお前いなかったもんな」 

 さらに夏の「『ずっと自分が殺したんだ』って思ってたから」、夏と水季の子・南雲海(泉谷星奈)の「しゃべれないよ、骨だもん。骨になったら痛くない?」などのセリフもあり、そのたびにSNSのコメントが増え、ネット記事がアップされました。 

 これまで生方さんが手がけた『silent』『いちばんすきな花』は、厳しい状況にあっても主要人物のほとんどが“普通のいい人”。感情的になるシーンは少なく、穏やかなムードの作品でした。 

一方、『海のはじまり』も主要人物のほとんどが“普通のいい人”ではあるものの、時に前述した不信、嘆き、怒り、憎みなどの強い負の感情を漏らすセリフがあり、不穏さを漂わせています。 

モノローグを避けたことも話題性に 

 これらの鋭いセリフや強い負の感情は、生方さんが親子と血縁、出産・中絶というテーマを扱うにあたって、人間の優しさや強さだけでなく、冷たさや弱さも描くことで本質に迫ろうとしたからでしょう。 

 もう1つ脚本で特筆すべきは、これまで多用していたモノローグ(独白)を使っていないこと。これは前述した「時折放たれる鋭いセリフを際立たせる」とともに、「登場人物の感情を伝えすぎないことで視聴者に考えてもらう余白と余韻を作る」という効果があります。 

 その余白と余韻がネット上で語りたくなることにつながり、反響の大きさにつながりました。特に2010年代以降のドラマは、視聴の途中離脱による視聴率低下を避けるために、「シーンを次々に変え、カット数を小刻みに増やし、早口のセリフを詰め込み、大きな展開で見せていく」という脚本・演出の作品が主流。「余白と余韻は省かれ、説明ゼリフ、モノローグ、ナレーションが多用される」など、感情の描写を軽視する傾向が続いているため、生方さんの脚本に反響があるのは当然かもしれません。 

 また、そんな生方さんの脚本を演出と音楽がサポートしていたことも話題性につながった理由の1つ。その美しい映像と音楽は鋭いセリフをやわらげ、視聴者に心地よい余白と余韻を感じさせています。 

 さらに俳優たちの熱演も当作の話題性を支えてきたポイントの1つ。なかでも大竹しのぶさん、池松壮亮さん、古川琴音さんの3人は前述したシビアなセリフを引き受け、「いい人なのに人間の冷たさや弱さがにじみ出る人物」を演じ続けています。 

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