名優の熱演を一手に受ける目黒蓮
「主演の目黒蓮さんがそんな3人によるシビアさを一手に受ける」という図式の設定も話題性アップにつながりました。
それぞれ大竹さんが67歳、池松さんが34歳、古川さんが27歳と異なる世代ながら高い評価を受ける俳優と向き合うことで目黒さんが役に入り込み、最終話目前で「夏がかわいそう」という視聴者の感情移入がピークに達した感があります。
ただ、第1話の段階から「水季が勝手すぎる」「勝手に産んで夏に押し付けた」という感覚が続いている人は共感しづらい作品なのでしょう。水季の行動を「ありえない」と断罪するのか。それとも「人間だからないとは言い切れない」と事情を汲もうとするのか。そんな自分の心理傾向をはかる作品なのかもしれません。
また、「ドラマの余白と余韻を『不要』「無駄」と感じる」「登場人物に思いをはせることが好きではない」など展開重視で見たい人は楽しめないところもありそうです。しかし、それでもけっきょく見てネット上の不満の声を書き込んでしまう……中毒性があるのも確かでしょう。
いずれにしても制作サイドは、親子と血縁、出産と中絶というテーマの善悪、可否、優劣などを描こうとはしていません。それぞれの考え方や事情があることを提示した上で、登場人物の選択を描こうとしていますし、最終話では主人公の夏を筆頭に海、朱音、津野、百瀬弥生(有村架純)らの自分らしい生き方が見られるのではないでしょうか。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。