車椅子のまま車に乗り込んでいく西田敏行(2021年)

車椅子のまま車に乗り込んでいく西田敏行(2021年)

 そのおかげで演技を続けられているということはご自身も分かっておられるようで、奥さんには頭が上がらないようですよ」(芸能関係者) 

 デビュー以来50年以上、芸を磨き続け、数々の名作に名を連ねてきた西田。その姿を一番近くで見てきたのが妻であり、家族だ。 

「ご家族は、西田さんの一番のファン。出演作は欠かさずに見ていて、“100才まで生きて” “死ぬまで演技を続けて”と言っているそうです」(前出・芸能関係者) 

 家族とは別に、西田の心の支えとなっているのが、故郷の存在だ。西田は俳優を志して上京する中学卒業までの時期を、福島県郡山市小原田で過ごした。当時小原田は田んぼが広がる素朴な町で、学校が終わると友達と田んぼでチャンバラをしたり、川で泳いだりする日々だったという。 

 この頃一緒に遊び回った友人たちは俳優・西田の最初のファンであり、今もかけがえのない友だという。友人の1人は、かつて西田について次のように話していた。 

「西田の作品が上映されるときや舞台があるときは、バスを貸し切って、地元のファンとみんなで上京して最前列で応援するんです。 

 売れっ子になってからも、時間があれば地元に帰ってきていました。帰ってくれば、必ずみんなで集まって酒を酌み交わし、気が付くとみんなで一緒に寝てしまう。結婚後に、みんなで温泉に行くこともありました。冗談で『奥さんより、俺たちといる時間のほうが多いんじゃないのか』なんて笑ったこともあるほどでした」 

口癖は福島の方言で『大丈夫、なんの問題もないよ』 

 西田のふるさとへの思いは深い。 

「とにかく、西田さんの心の拠り所は福島にあります。東日本大震災の時も、発災から二週間後には地元へ足を運んで、友人たちと一緒に被害の大きかった南相馬市に車で向かったそうです。 

 いわき市の海岸沿いなどを見て、友人たちと何ができるか、何をするべきかを話し合い、“とにかくできることを全部やる”“福島の復興のためならなんでもやる”と誓ったといいます」(別の芸能関係者) 

 震災から6か月後には、郡山市で野外コンサートを開き、被災地への応援歌『あの街に生まれて』を歌った。この曲は、音楽プロデューサーの秋元康氏(66)による作詞。西田が被災したふるさとへについて語り、秋元氏がその思いを汲んで生まれた曲だ。 

 西田はその曲を、同年の紅白歌合戦でも披露している。 

「西田さんは、よく『さすけねえ』と言うんですよ。福島の方言で『大丈夫、なんの問題もないよ』という意味です。撮影現場でも、ちょっとネガティブな状況になったとき、あのいたずらっこのような笑顔で『さすけねえ、さすけねえ』って。その一言が、いつもみんなを勇気づけてくれるんです」(前出・別の芸能関係者) 

 西田の演技は、心を大きく揺さぶる。彼を育んだ故郷への思い、そして家族と周囲との死ぬまで俳優という約束を胸に、これからも唯一無二の演技を見せ続ける。 

杖をついて登場する西田敏行

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