世界最古の映画祭で、世界三大映画祭のひとつでもある「ベネチア国際映画祭」が、今年は8月28日から9月7日まで開催された。黒沢清監督の『Cloud クラウド』はアウト・オブ・コンペティション部門に登場。早くも米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表に選出され、9月27日の公開を待つ話題の本作について、黒沢清監督自身が制作の裏側や主演の菅田将暉(31才)について、イタリア・ベネチアの地で語った。
今年のベネチア国際映画祭はアジア圏の作品が少なく、コンペティション部門に日本映画の名前はなかった。しかし、映画界のカリスマ・黒沢清監督の『Cloud クラウド』は、アウト・オブ・コンペティション(特別招待作)部門に選出。公式上映が24時に開始という深夜枠にもかかわらず、会場は熱気に包まれた。上映前には数百人のファンが待ち構え、黒沢監督のサインを求める列ができ、本人をも驚かせていた。
本作は黒沢監督が得意とするサスペンス・スリラー。主人公の吉井(菅田将暉)は、あらゆる物を安く仕入れ、インターネット上で高く売る「転売屋」だ。昼間は町工場で働く二足の草鞋生活だったが、上司から昇進を持ちかけられたのを機に退職。交際相手の秋子(古川琴音、27才)を連れて郊外に移住し、本格的に転売業に集中する。だが、すぐに付きまといなど、不穏な出来事に遭遇。やがて、知人から、見ず知らずの赤の他人に至るまで、吉井を標的とした憎悪が雪だるま式に加速してゆく――。
映画祭期間中には嬉しいニュースも飛び込んだ。本年度の米国アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表に、早くも本作が選ばれたという。純粋に娯楽作品を目指したジャンル映画のオスカー候補選出は、監督にとってもかなり意外だったようだ。ジャンル映画とは、「サスペンスやホラーなど端的にジャンル分けができるような、一般的な物語構造の映画」という意味だ。黒沢監督はこう語る。