3食完備のレストランから大浴場、遊技場に売店まで「至れり尽くせり」を売りにする超高級老人ホーム。だが、そこには桃源郷とはほど遠い現実があった。『ルポ 超高級老人ホーム』(ダイヤモンド社)の著者でノンフィクションライターの甚野博則氏が明かす。
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入居一時金が数千万円から高いところでは4億~5億円。月々の支払いも50万円超というケースがザラにある超高級老人ホームは、往々にして一流ホテルと見紛う広々としたエントランスがあり、受付には24時間コンシェルジュが待機している。
温泉を引いた大浴場、シアタールームやジムなどはもちろん、フレンチのフルコースが提供されるレストランや、有名店の職人が出張で寿司を握りに来る和食店が入っていることも珍しくない。海沿いの施設ともなれば、100平米超の部屋が全室オーシャンビューというケースもある。
入居一時金が1億~4億円という都内のある高級施設では、これまで某大手化学メーカーの元社長、某鉄道会社取締役、元国立大学学長、有名声楽家など錚々たる地位と名誉を持つ人々が入居してきた。
この施設のスタッフは、「入居希望者には資力はもちろん、『品格』が求められます」と語っていた。
財力は当然、品格も備えているであろうセレブな入居者たちには、もうひとつ付け加えるべき特徴がある。それが「体力」だ。
一般的な老人ホームは、在宅介護では対応できなくなった高齢者が家族の要望で“入居させられる”イメージだが、超高級施設は違う。入居者は自らの意思でその施設に入り、かつ元気だ。前述した都内施設では、入居者の平均年齢は85歳。大半が要介護認定を受けていない。キャリーケースを引いて海外旅行に飛び回る入居者もいる。
ここに高級施設特有の厄介な問題が内包されている。
東海地方のある施設では入居者たちが主体となった「管理組合」が組織されていた。メンバーには理事長、副理事長、監事などの肩書きが振られている。
豪華なシャンデリアがぶら下がった応接室に集った管理組合のお歴々は、聞いてもないのに、「自分は○○企業の元取締役」「彼は霞が関の元官僚」など、過去の輝かしい経歴を披露してくる。