背中に個性的なリュックを背負っていた

事件直前の被害者男性。背中に個性的なリュックを背負っていた

3日後に父娘で「SMの練習」

 そしてその3日後の6月21日には、瑠奈被告は家で“SMの練習”をしたのだという。

「約束を決めた直後くらいで、SMプレイをするとその前から言ってて、この日に練習、と宣言したわけじゃないですが、何か『ちょっとやってみたい』と。あー、そういうことかなと、練習しました。長くて1〜2分、もっと短かったかも。正座して、手を後ろに回して、目をつぶって、これはまあ、手錠をかけられてアイマスクのつもりだと言われました。後ろから何か迫ってきて、頭や首の周りを触ったりする様子がありました。『どう?』と言うから、『何かぞくぞくするね〜』と、なんかやりとりした記憶があります。ちょっとしたら本人は満足して『もういいわ、OK』と」

 このような流れで、修被告は“意に反する性行為をされた男性と和解した娘が、次はSMプレイをすることを楽しみにしている”と思っていたのだそうだ。そして当日はSMプレイをするために出かけて行ったはずの瑠奈被告が、なぜか男性の頭部を持ち帰った……ということになる。しかし浩子被告の初公判で検察官は、修被告は少なくとも事件の10日以上前に娘の犯行計画を知ったと主張しているのであるから、こうした発言は注意深く見る必要があるだろう。

 事件の日、瑠奈被告はホテルで「SMプレイを装い、男性にアイマスクをつけ、両手首を緊縛してカメラで撮影しながらナイフで刺した」(初公判での検察側冒頭陳述)と検察官は主張している。修被告は、純粋に娘が“SMプレイを楽しむ”つもりだと思っていたのか、それとも“SMプレイを装って殺害する”ことを認識していたのか。今後の三者の公判で明らかになってゆくことだろう。

 浩子被告と修被告は「幼少の頃から、叱ることも咎めることもなく瑠奈を溺愛し、成人後も瑠奈の要望を最優先し、望むものを買い与えていた」(初公判検察側冒頭陳述より)という。こうした『瑠奈ファースト』精神は事件においても発動されていた。男性の頭部を損壊する様子を撮影するように頼まれた修被告は「瑠奈さんに『やめなさい』というのは難しい?」と浩子被告の弁護人に聞かれこう答えた。

「それはまずいんじゃないかということはありますが、今回のはすでに損壊し終わってる状態。しないといったところで娘は作業をする。作業を中断することで本人の感情がコントロールできなくなる。しないほうがいいんじゃないの、と言うのは難しい」

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