哲学の言葉以上に、詩と文学に育てられた
それぞれの章に、寺山修司や穂村弘、東直子、岡野大嗣といった人たちの短歌や詩の言葉が引用されているのも印象的である。
「書きながら気づいたことですけど、自分は哲学の言葉以上に詩と文学に育てられたという意識が強いんです。『世界の適切な保存』の最も巧みな保存者のひとりとして、詩人の言葉は必然的に出てきましたね。ルールとして毎回入れよう、とかじゃなく、これも自然に入ってきちゃった感じです」
10代のときからずっと、気になった言葉を書き留めることを続けてきたそうだ。
「『写経』って勝手に呼んでるんですけど、これはというものをひたすら書き写しているノートがあります。手書きもしていますし、いまはパソコンのエバーノート(アプリ)にも入れています。エバーノートは検索機能があるのですごく便利です。つらつら見ながら、いつか書きたいといつも思っているので、自然にすっと言葉が出てきますね」
短歌や詩の言葉に思いがけない角度から光が当てられると、言葉が現実とつながり、新たな扉がとつぜん開くような読書体験ができる。