「お互い様」の精神で
ここ数十年の間にも、日本は大きな自然災害に見舞われてきた。
「そんな時にも大規模な盗難事件や奪い合いといった争いごとは比較的少なく、こんな時こそ、お互い様の精神で助け合うという光景が多く見られました。このことは海外でも大きく取り上げられ、多くの日本人はそこで初めて、自分たちが祖先から受け継いできたかけがえのない美徳について自覚したのではないでしょうか。
相手の立場を慮り、思いやる────私たちは、祖先から受け継いだこうした美徳を持っています。その気持ちは、目の前にいる人とは限らず、会うこともない他人に対してもめぐらせることができるはずです。なぜなら、思いやるとは、その人がうれしい、心地いいと感じるだろうな、と想像を広げることだからです。その思いやりが形になってできあがった結果が、マナーや作法、ルールです」
「どうぞお先に」の気持ちを言葉にする
ビジネスでもプライベートな場面でも、人の暮らしの中には必ず「順番」が出現する。たとえばエレベーターに乗り込む時、駅のプラットホームで電車を待っている時、複数で会話をしている中で発言する時、などなど。
「こういう時、われ先に! ではなく、順番を礼儀正しく待つのはもちろん基本ですが、もう少し余裕を持って、周囲の人を思いやる心を持ちたいものです。エレベーターに乗る時には先を譲る、乗り込んでくる人のために『開』のボタンを押す、降りる際にもボタンを押して、『お先にどうぞ』とうながす……など。ふだんの暮らしの中で、どうぞお先に、という気持ちを言葉や仕草で表現できたら、あなたの存在はきっと落ち着いていてきちんとした人に映るはずです」