犯人は犯行後、中田被告の自宅に──
事件発生から約5年経って始まった裁判の争点は、中田被告が犯人かどうかに絞られている。冒頭陳述で弁護側は、バイクに乗ったフルフェイスの人物によって事件が起きたことは争わないが、検察が提出した証拠には、この人物が中田被告だとする“直接証拠”がないと主張。「検察は間接証拠による推認というやり方をとる」「間接証拠の積み重ねに価値がない」とし、全面無罪を主張した。
この日の公判は、検察側の証拠提出に終始。検察は防犯カメラのリレー捜査から得られた映像をもとに、犯行当日の犯人の行動ルートを提示。映像のなかで、犯人は黒い原付バイクに乗り、弘道会の拠点周辺に幾度となく姿を現していた。その後、軽自動車に乗った被害者が拠点前で荷物の運び込みを終え、駐車しようとした直後に通り過ぎたばかりの黒い原付バイクが急スピードで切り返し、わずか2秒足らずで6発の銃撃を浴びせた。
検察は、犯人が犯行後、現場付近にあるホール・劇場の駐車場で、白色のスクーターに乗り換え、再び近隣病院の駐車場で乗り捨て、徒歩で民家に入ったと主張し、防犯カメラの映像を提出。原付バイク、スクーターは中田被告本人や山健組に関係があり、犯人が徒歩で移動した民家は中田被告の自宅だったこと、犯人が自宅に入った直後に中田被告の携帯に発信履歴があったことを今後提示していくという。また、当日昼の中田被告と現場で写った犯人の服装が同じだったとも指摘している。
5時間近くの公判の間、中田被告は常に検察をまっすぐ睨んでいた。判決は10月31日に下される予定だ。
(後編に続く)