被告人質問で中田被告が口にした言葉
検察が積み重ねた証拠に対して中田被告はどう供述するのか。10月11日午後に被告人質問が実施された。証言台に座った中田被告は背もたれに寄りかからず、背筋を伸ばし、胸を大きく張り、弁護士の「被告人質問にどう対応するか」という問いかけにこう答えた。
「すべて黙秘権を行使します」──その言葉通り、以後、検察の質問にはすべてこの一言しか口にしなかった。「事件当日の服装は?」「逮捕されたのはなぜ?」「犯人が中田被告の家に入ったのは?」という事件の核心に関わる質問は当然のこと、経歴、肩書といった公判冒頭の人定質問では口にしていた質問に対しても「黙秘権を行使します」と答え続けた。
裁判官の質問に対しても「誠に申し訳ありませんが」と口にしたものの同様の対応だった。一般市民から選ばれた裁判員の「利き手はどちらですか?」という質問に対しては予想外だったのか、弁護士の顔を見る一瞬の間があったものの答えは変わらなかった。
公判は10月15日に弁論手続が行なわれ、検察側の論告・求刑、弁護側の弁論、最後に被告人の最終陳述が予定されているが、「中田被告は被告人質問同様、黙秘を貫くのではないか」(前出・実話誌記者)と見られている。直接証拠もなく、被告の証言もないまま判決を迎えることになる。
「直接証拠がなく、裁判官の『推認』による判決といえば、2021年8月、九州の特定危険指定暴力団・工藤会の野村悟総裁への福岡地裁の死刑判決が有名です。
しかし、今年3月の福岡高裁での控訴審では、『推認の死刑判決に無理があった』として一部事件を無罪とし、一審判決を破棄し、無期懲役に減刑され大きな話題になりました。このように暴力団の抗争事件は難しい判断を迫られることが多く、裁判員裁判の対象外となるのがほとんど。そのため今回の裁判は一般市民がどういう評議、評決を行なうのかに注目が集まっている」(同前)
中田被告への判決は10月31日に言い渡される。
(了。前編から読む)