「警察から”お子さんの件で”と電話があるまで、まさか息子が詐欺事件に巻き込まれるなんて想像もしていませんでした。どうやら、いわゆる詐欺事件のお金の”受け子”のバイトを知人から紹介されてやったようで、警察に捕まったんです。息子は取り調べにも、私たちにも”本当に知らない”とか”騙された”と泣きじゃくっていました」(主婦)
彼女の息子は、学校の友人から「割のいいバイトがある」と紹介された。息子は「まさか闇バイトじゃないだろう」と、とくに疑いもせず軽い気持ちで承諾。友人と共に、免許証などの個人情報をバイトの「仲介者」に送ったという。そして最初のバイトは、指定された場所で受け取った荷物を、また別の指定された宛先に郵送するだけ、というものだった。簡単なうえに1万円程度のギャラまで発生したから、息子も友人も「本当にもらえた」「割のいいバイトだ」と喜んだ。しかし、いっときのぬか喜びは、一瞬にして恐怖に変わったのだ。
「最初のアルバイトをしたあと、今度はロッカーから荷物を取り出して人に渡せとか、他人名義のクレジットカードで買い物をしろ、という指示が出たそうです。さすがに息子たちもこれは詐欺ではないかと怖くなり断ったそうです。ですが、そこから家族に危害を加えるなど脅され、仕方なくやってしまったと。捕まってホッとしている様子でしたが、早く引っ越さないと、私や家族が危険だと取り乱したりもしました。闇バイトから抜け出せず、誰かに怪我をさせるなどする前で本当に良かった」(主婦)
特殊詐欺や連続強盗などの「実行役」のリクルートは、警察当局の強い締め付けもあり、年を追うごとに厳しくなっている。さらに直近では、闇バイトの報酬を受け取ろうとしていた男が、別の闇バイトで集められた男らに襲撃される、といった事件も起きており、犯行グループや指示役らの仲間割れなど、内部的なトラブルも続発しているとみて良い。
どんなに困っていようと「闇バイトだけは勘弁」と考える人が増える一方、自暴自棄になって手を出したり、ここで紹介したような半ば「騙されて」犯罪に加担せざるを得ない状況に追い込まれる人も増加するはずだ。