冒頭の店長とは別の元コンビニオーナーが話す。
「イートインは儲からなかった。客単価の低い客というより客じゃない人が来る。細かく言われることはなかったがイートインとテイクアウトで脱税だろう、と思うこともあったが意思確認をしても客が守らなければどうしようもない。言ってもキリがなかったし言ったら危険な客もいる。それが現実だった」
それでも都心部、特にビジネス街のコンビニのイートインはお昼ともなれば大盛況である。それが売り上げにつながっているのかどうか──深夜帯ともなればそのスペースほどにお金を使ってもらえているとは正直思わない。そもそも24時間営業すらギブアップするコンビニが続々増えている。
ファミリーマートはイートインを切る決断をした。現場の労働者と売上を考えればイートインが負担であったことは確かだろう。売場拡大により売上7%増を見込むということで、ファミリーマートからすればイートイン、その負担の割には、だったということか。
便利な休憩スペース、スマホの充電スペースとして重宝されたコンビニのイートインの撤退や縮小もまた、この国の倫理と価値観の変化、そして「なんでも現場に押しつければいい」が通用しなくなり始めた、この国の労働観の変化の一端なのかもしれない。
日野百草(ひの・ひゃくそう)/出版社勤務を経て、内外の社会問題や社会倫理のルポルタージュを手掛ける。日本ペンクラブ広報委員会委員。