来る総選挙は、自民党総裁の石破茂首相と野党第一党・立憲民主党の野田佳彦代表がともに「保守」を自任する政治家としてぶつかり合う。だがこの2人、果たして“本物の保守”なのか。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が、石破首相の立ち位置について分析する。
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結論から言えば、石破氏はリベラルな保守だと思う。伝統的なものを大切にするという価値観は保守で、多元的な意見を認めるというアプローチはリベラル。それに対し、安倍晋三・元首相を支えていた人たちは岩盤保守と呼ばれるが、“こうすれば理想的な日本ができる”という考え方は、保守というより右翼ナショナリストだ。
そして石破氏の理念を理解するうえで見落とせないのが、プロテスタントのキリスト教徒であることだ。総裁選前に発売されて広く書店に流通した『保守政治家』よりも、版元からの直販のみの『石破茂語録 主よ、用いてください』(あだむ書房)という著書のほうが石破氏の内在的論理をよく理解できる。
同書から読み取れるのは、石破氏が日本政治史において稀有な、強いキリスト教信仰を持つ首相であるということだ。人間は過ちを犯す存在だと認めて、少しずつ良くしていこうというキリスト教は保守思想と親和性が高い。夫婦別姓を容認するといった考え方の根底にも、このキリスト教があると考えていい。
神社は参拝するけれども、神社の神々に祈っているわけではない。そうして表向きは現実に合わせた行動を取り、内面には信仰がある。公明党・創価学会などと同じ構造だろう。戦後日本の価値観に基づいた保守と言える。むしろ野田氏のほうが神がかり的な考え方で右翼ナショナリストに近い立ち位置と見ている。
熱心なキリスト教徒である石破氏は、首相になったことで自分には歴史的使命があると強い信念を持ったように感じる。