ピンクのチェーンを持つゆりやんレトリィバァ(Netflix公式Instagramより)

ピンクのチェーンを持つゆりやんレトリィバァ(Netflix公式Instagramより)

 ゆりやんはドラマのなかで本当に彼女なのかと見間違うほどの演技を見せている。正直に言うと、ずっとゆりやんは苦手だった。舌ったらずのような甘えた話し方やプヨプヨしたボディ、お笑いのネタも面白いパフォーマンスというより、米国のオーディション番組「アメリカズ・ゴット・タレント」に出演した際に見せた、星条旗模様のきわどい水着と奇妙なダンスをするような、得体の知れないところが気持ち悪かった。

 だがこのドラマで彼女への見方が変わった。好きになれなかった話し方は、ダンプになる前の松本香が持っている本来の優しさを引き立たせ、得体の知れなさはダンプがヒールとして劇的に変化した時の裏付けとなっていた。弱さと強さ、優しさと怖さ、振り子が右から左に振り切ってしまうような変化を、ゆりやんは見事に演じている。

 ムチムチした筋肉質の身体でヒールとしてリングを駆け回るゆりやん演じるダンプ松本は、遠慮も容赦もなく強かった。その身体を作るため、一度はダイエットで45kg痩せた身体から40kgも体重を増やしたという。そんなゆりやんが演じたからこそ、ドラマの中の松本香がダンプ松本になっていく過程で、自分の意志で、自分が選んだものを自分の力でモノにしていくという強さが強調されたのだ。その強さは「心理的コントロール」とでもいえばいいだろうか。

 ダンプとして人気が高まれば高まるほど、忌み嫌われてしまうという自分をいかに感情的にコントロールするか、その闘いもドラマの要素の1つとなっているだろう。ゆりやんは表情だけでなく目線や話し方、歩き方や座り方、肩を怒らせたり力を抜いたりするような仕草などでそれを表現、お笑い芸人の域を超え、女優としても成功している。

 そして女子プロレスを運営していた男社会で駒のように扱われていたプロレスラーたちが、自分で自分の行く道を決めていく、選んだ道で成功していくというコントロール感が、壮絶なシーンがありながら、最後には熱血青春ドラマを観たような満足感や爽快感を視聴者に与えてくれるのだろう。

 12月には米国へ活動の拠点を移すというゆりやん、どんな挑戦を見せてくれるのか楽しみだ。

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