中国の免許は簡単というかいい加減
なぜ中国人が殺到しているか――それは彼らの言う通り、中国(香港、マカオを除く中華人民共和国)の運転免許はほとんどの国で国際運転免許証を発給してもらえないからである。ここで彼らの言う「日本の免許」とはジュネーブ条約加盟国の発給する国際運転免許証であり、いわゆる外免切替のことである。
都内、長く日本に住む旧知の中国人男性から話を聞く。
「取った時代や地域にもよるけど中国の免許は簡単というかいい加減なんです。だから運転できる国はほとんどありません」
彼の言葉を補足すると、いい加減かどうかはともかく、日本で運転免許を取得した人はほとんどの国で国際免許を発給してもらえるが、中国で運転免許を取得した人はほとんどの国で国際免許を発給してもらえない、ということである。
運転免許の国際制度は非常に複雑で国家間協定や特例、その国でも地域によって扱いが違う(州によって違うアメリカなど)場合があるので細かい説明は措くが、簡単に言えば「ジュネーブ条約」と「ウィーン条約」の二つの国際条約によって成り立っている。
まず日本は運転免許で「ジュネーブ条約」に加盟している。ジュネーブ条約加盟国は世界中のほとんどの国や地域である。中国でも香港やマカオで運転免許を取得した人はジュネーブ条約加盟地域なので問題なく日本で国際免許を発給して貰える。後述のウィーン条約加盟国でもジュネーブ条約と両方加盟している国もある(イギリス、韓国など)。
いずれにせよ日本で運転免許を取得した人は「自分の免許が国際免許に切り替えられない」という経験をすることは少ないだろう。それほど世界の大半はこのジュネーブ条約に加盟している。
いっぽう、中国は運転免許で「ウィーン条約」のみ加盟している。ロシアなど欧州の一部、南米、アフリカといった国々で、日本人が運転するのはまあ、かなりレアなケースなのは事実だろう。ちなみにドイツやスイスもウィーン条約のみの加盟国だが、日本の運転免許証そのままに手続き(翻訳証明など)をすれば定められた期間内なら運転できる。そこは言い方が難しいが外交上の相互間協定なのでその国の「信用」によるところもある。
日本人の多くは意識することもないが、何十時間もの実技教習や学科講習と各試験を経て取得する日本の運転免許証というのは非常に国際的に信頼のある、価値あるものなのだ。