全てが比べられ誹謗中傷のリスクも
間違いなく比較を避けられないのは選手たちのプレー。投手なら球速、コントロール、変化球のキレ、野手なら打撃のパワー、守備のフィールディング、走塁のスピード、投手交代や足を絡めた作戦などのベンチワーク、選手層などのチーム構成、球団運営やスタジアム、それ以前に体格、表情、気迫などの選手個人にかかわるところまで比べられるのではないでしょうか。
「朝のMLBはこんな試合だったけど、夜のNPBはこんな試合だった」「朝のドジャースはこんな投手交代をしたけど、夜のホークスはこんな投手交代だった」「朝のドジャース・大谷選手はこんなスイングだったけど、夜のホークス・柳田悠岐選手はこんなスイングだった」などと連日比べられることが予想されます。
あやうさを感じさせられるのは、フラットな目線ではなく批判前提での比較もありそうなこと。特に日本シリーズを戦う両チームの選手はメジャーリーガーと比べられて誹謗中傷を受けるリスクが懸念されます。大谷翔平選手の活躍でメジャーリーグの注目度が高まっているだけに、NPBの球団側は事前に選手を守る対策を考えているのではないでしょうか。
ただ、ホークスとベイスターズの選手にとってはプレー次第で、「俺たちもメジャーリーガーに負けていない」ことを証明するチャンスであるのも事実。「日本シリーズのほうが面白い」「この選手はメジャーリーガーの中に入ってやっていける」などと評価されるためにも、より気持ちを込めたプレーが期待できそうです。
今年は春からメディアが大谷選手の話題を大量に扱い、なかでもテレビは朝から夜まで一挙手一投足をフィーチャーしてきました。それは両シリーズの開幕前も変わらず、NPBは話題性の上で大きな差をつけられていただけに、最後に意地を見せたいところでしょう。
日本シリーズのチャンスは選挙の日
もう1つ比較が避けられないのは、プレー以外のムードや数字。シリーズ全体と各試合の盛り上がりはどうなのか。視聴率やXのトレンドランキングはどうなのか。
とりわけ同じ時間帯に放送される日本シリーズの生放送がワールドシリーズの再放送にこれらで負けるようなことがあれば、今後への影響必至。ただでさえ少なくなった地上波でのNPB中継がさらに減ってしまうなどのリスクが考えられます。
なかでも注目は、各局が衆議院議員選挙の開票速報を放送する27日の夜。各局が横並びで選挙速報を放送する中、TBSは唯一『決戦!緊急W中継 SMBC日本シリーズ2024×選挙の日』と題して日本シリーズを生中継するだけに、盛り上がりや視聴率、Xのトレンドランキングなどをどこまで伸ばしていけるのか。NPBの今後に影響を及ぼしそうです。
さらにテレビ中継そのものも比べられる可能性が高く、実況、解説、ゲストの人選、その他の演出も含め、シビアな目線で見られるでしょう。
一方、野球にまったく興味がない人にとっては、日ごろ見ている番組が放送休止になるなどのネガティブな影響があるのも事実。夜はほとんどの日で両シリーズを2つのテレビ局が放送することもあって、ネット上には「見る番組がない」という声もあがるでしょう。
それでも多くの人々が選手たちに「どちらも素晴らしかった」という温かい言葉をかけられるようなシリーズになってほしいところです。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。