興味深いのは、複数台のドライブレコーダーに映像と音声が残っていたことだ。
「走り心地がいい。あと30分で到着する」
「この前の(盗んだ)クルマは31万円で売れた。その前のは20万円だ」
映像を確認すると、ベトナム語で、中部の訛りのある会話が確認できた。初犯ではなさそうだが、松本氏はこう続ける。
「ただ、マニュアル車のクラッチ操作に慣れずエンストさせるなど、素人っぽさは抜けません。完全なプロの窃盗団なら、クルマをいきなりヤードで解体し、海外に売り払う。今回の場合、そのまま個人間で売買しようとした形跡があります」
ドラレコの映像には、運転する犯人がとあるアパートの駐車場に立ち寄り、仲間か顧客らしき人物と話す様子が残されていた。
映像から場所を特定すると、アパートは群馬県太田市にあることがわかった。スバルの企業城下町で、人口の6.8%が外国人という多国籍な街だ。太田駅から東に3キロほど進んだ住宅街にアパートはあった。
同市では働き口に困らないことから不法滞在者も多い。過去、ボドイによるブタや桃の大量盗難事件が起きた際にも警察側から拠点とみなされたことがある。
現地では無免許のまま、闇ルートで買った自動車を乗り回すボドイも多く、私も過去の取材のなかで多数確認してきた。
私は、件のアパートを訪ね、犯行グループへの直撃を試みた。