「和製横綱」を目指す大関対決にも注目
大の里は秋巡業を「アデノウイルス感染症」で離脱し、体調に一抹の不安を残してもいた。
しかし、親方の胸を借りた冒頭のぶつかり稽古で、その懸念をいきなり払拭してみせた。
「番付社会で大関を転がして砂まみれにできるのは横綱だった師匠しかいない。若い力士を鍛えるために兄弟子が見せる光景です。師匠が元横綱というのは大の里にとってアドバンテージとなる」(前出・相撲担当記者)
もちろん土俵上でも難敵が待ち構える。同じく「和製横綱」を目指し、連合稽古で大の里との取組を見せた大関・琴櫻が、独走に待ったをかける。
110年ぶりの新入幕優勝を飾った尊富士が幕内の土俵に戻ってくるほか、同学年でたたき上げの平戸海をはじめ、王鵬、若隆景、熱海富士、阿炎が番付上位に名を連ねる。
常に謙虚な大の里だが、今回の取材に「いい形で1年を締めくくりたい」と語った。彼なりの優勝宣言なのだろう。「和製横綱」の足掛かりとなる15日間が始まる。
取材・文/鵜飼克郎 撮影/太田真三、作田祥一、杉原照夫
※週刊ポスト2024年11月22日号