警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、元受刑者が、出所後に自由を感じる瞬間について。
* * *
刑務所に入ったことを「後悔はするけれど、反省はしない」、服役している最中は「どうやったら楽に過ごせるかを考える」、出所が近くなれば「思うのは、今度はパクられないようにしようということだけ」という前科〇犯のヤクザたち。そんな彼らが出所して自由を味わうのは、どのような時なのか。
ドラマや映画で、出所した元受刑者が職場でトイレに行きたくなり、手を上げて上司に申し出て許可を取ろうとするシーンを見たことがないだろうか。日本でも多くのファンに愛されている映画『ショーシャンクの空に』にも、そんなシーンが出てくる。俳優ジェームズ・ホイットモア演じるブルックスが、長期刑を経て釈放され、働いているスーパーマーケットでのシーンだ。自由を象徴する1つとして描かれているのだが、何から何まで許可を取らなければならない刑務所生活になじんだ元受刑者には、自由であることも逆に不安とストレスになってしまうようだ。
詐欺や窃盗、恐喝や暴力事件で収容されるヤクザのほとんどは、数十年という長期刑ではなく、数年の刑期で服役し、出たり入ったりを繰り返す。そのため出所すれば、ブルックスのように不安を感じることなく、自由を満喫する。出所前、自由の雰囲気を微かに味わえるのが釈前房だという。
人生のほぼ3分の2を刑務所で過ごしている者や、全国あちこちの刑務所を渡り歩いているという前科者でも、仮釈放、もしくは満期釈放される日が決まると、釈前房という部屋に移される。素行がよい者には、一般住宅に近い部屋で鍵がかかっていない開放寮に移され待遇が変わるようだが、暴力団の現役幹部はそうではなかったようだ。彼らが釈前房で自由にできたのはおひつだった。
「ご飯の時間になるとおひつが出てきて。自分で茶碗によそう。それまでは決まった量を決まった形で分け与えられていたのが、自分が好きなように、好きなだけ食べられる。メシだけでも自由になると、出所するんだという気分になる」(ある暴力団幹部・以下同)