「国会議員の資質なし」との烙印は早計
タレント議員と言われるのに、予想外に地味な初登院だった森下議員だが、その資質に対して疑問視する声が選挙期間中に大きくなった理由は、YouTube番組『日経テレ東大学』で、ひろゆき氏との対談で政治知識が乏しいことが伝わってしまったからだろう。対談では食糧自給率についても正確に理解していなかったので、以前に自民党から出馬したタレント議員を引き合い出されて批判が高まった。だが、あらかじめ知識が豊富であることは、実は国会議員に求められる最も重要なことなのだろうかという疑問がある。
筆者は、これまでに選挙や国会など、多くの政治の場に足を運び、タレント候補・タレント議員と呼ばれる人たちを数え切れないほど見てきた。その経験からも、タレント議員という色眼鏡で見て、「国会議員の資質がない」とか「不勉強で、仕事ができない」と十把一絡げにハナから批判する気は起きない。
たとえば、市議会議員や市長といった政治家経験があれば国会議員として仕事ができるのか。はたまた財務省や外務省での勤務経験があれば国会議員は務まるのか。必ずしもYesとは言えないだろう。
なぜなら官僚から国会議員に転じたことで威張り散らして有権者からそっぽを向かれる国会議員を筆者はたくさん見てきたし、市長や知事の経験があっても勝手が違う国会議員という立場になって手腕を発揮できなった人もいた。また、頭でっかちになりがちで一般庶民の切実な訴えを理解できない議員もいる。
なぜ、芸能人やスポーツ選手が政治家に転身するときだけ非難されるのか。政治経験や知識は乏しくても、庶民に寄り添えることは政治家にとって非常に重要な資質でもある。
森下議員の食糧自給率を理解していなかったとする件も、その場で知らなくてもその後に勉強すれば済む。その失態をクローズアップして「国会議員の資質なし」と烙印を押すことは早計だろう。
国会議員になれば、あらゆる分野の人たちから毎日のように陳情を受けることになる。そうした数々の陳情の中には、これまで自分が携わってこなかった未知の分野も多々ある。それら知らない分野でも、親身になって話を聞かなければならない。だから、知識よりも話に耳を傾ける姿勢こそが重要になるのだ。