ライフ

杉山桃子さん、祖母を書いた&描いたデビュー作についてインタビュー「佐藤愛子の人生を自分なりに表現できるのはありがたい財産」

『佐藤愛子の孫は今日も振り回される』/コスミック出版/1540円

『佐藤愛子の孫は今日も振り回される』/コスミック出版/1540円

【著者インタビュー】杉山桃子さん/『佐藤愛子の孫は今日も振り回される』/コスミック出版/1540円

【本の内容】
 本書の「おわりに」で、桃子さんは祖母・佐藤愛子さんについてこう綴っている。《確かに私と祖母は合わないと思う。(中略)祖母は私のことをよく「頭でっかちで理屈っぽい」と言うが、私は祖母に対して「事実や道理より自分の感情を押し通す人」と思っているのである》と。そんな考え方、生き方の違いも相まって、桃子さんの祖母を見る目は実に批評的。辛口でありながらユーモラスな文章はどこか佐藤さんとも通じる。「祖母との思い出」「佐藤家の人々とその周辺」「アバウト・ミー」「最近の祖母」「娘と孫の対談」の全5章。本文内の漫画も描いているほか、グラビアにも挑戦している。

祖父母や両親をケアする介護 世代に寄り添うような文章を

 タイトル通り、孫の目から見た祖母の姿が描かれている。杉山桃子さんは、佐藤愛子さんの読者にはおなじみの「孫の桃子」で、あの佐藤愛子にここまで遠慮なくツッコミを入れられるのは、日本中で桃子さんただ一人であろう。

「担当編集者さんは、たぶん佐藤愛子のファンに向けての本を出したかったと思うんですけど、祖父母や両親をケアする介護世代に寄り添うような文章を書けたらな、という気持ちが自分の中にはありました」

 遠慮なく書いて炎上したらどうしよう、とも思ったそうだが、「炎上するぐらいの本を書けたらすごいじゃないですか」という担当編集者の励まし(?)もあり、「ブレーキをひとつはずして」書いた本だという。

 佐藤愛子さんはこの11月5日で101歳になった。年齢による認知機能の衰えもあるそう。取材当日は、骨折の治療などで入院中とのことだった。

「書いているときは祖母も家にいて、リアルタイムで介護していたので、結構モヤモヤしながら書いているところもあったんですよね。ただ、こうして本が出させてもらえるのは本当に祖母のおかげだし、佐藤愛子という一人の人間の人生を自分なりに表現できるというのは、自分にとってありがたい財産なのかなと感じています」

 佐藤さん自身が描く佐藤愛子も面白いが、孫の目から見た祖母佐藤愛子も爆発的に面白い。ユーモラスで愛があり、ところどころに辛辣さもある桃子さんの人間観察眼は、さすが祖母譲りと思わせる。

 佐藤さんは、さぞ観察しがいのある対象だっただろう。

「みなさんそうおっしゃるのもよくわかるんですけど、なにぶん『おばあさん』というのを佐藤愛子しか知らなくて……。父方の祖母もいますけど、一緒にいる時間が短かったし、昔話に出てくる『いいおばあさん』みたいな優しいおばあさんだったので、『いいおばあさん』と『意地悪ばあさん』みたいで本当に対照的でした(笑い)」

 佐藤さんについて、「厳密に言うと、意地悪というより深すぎる愛情がひっくりかえって、おかしなことになるんだと思います」と孫のフォローが入った。

 ずっと一緒に暮らしてきたが、桃子さんが高校生ぐらいのときから、「おばあちゃん」という感じの存在ではなくなったそうだ。

「なんと表現したらいいのか難しいんですけど、すごくめんどくさい先輩みたいな感じでしたね。一般的な、祖母と孫の遠慮みたいなものはない関係でした」

 佐藤家をよく知る人からは、佐藤さんと桃子さんの母響子さんは、親子でありつつ夫婦のような関係性でもあり、桃子さんは二人の子どものようだと言われたそうだ。

 佐藤さんの元夫で、桃子さんの祖父(作家の田畑麦彦)についても書かれている。田畑麦彦について、佐藤さんの読者が「諸悪の根源」とインターネットで書いているのを響子さんが見つけ、憤ったことがあったという。

 佐藤さんの小説だけ読むと、多額の借金を残し、佐藤さんが借金を背負う原因をつくった人として記憶に残るが、孫の目から見た祖父は、ほがらかで呑気な、品のいいおじいさんだったそう。

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン