刑事さんが背中を押してくれた
ところが、「今後」の手紙を待つ中、勝田容疑者は11月7日の逮捕当日から接見禁止となり、弁護士以外の面会が認められなくなったうえ、外部との文通が不可能な状態となった。
その一方で、新聞やテレビでは「警察が提供した情報」として勝田容疑者の逮捕後の供述が報じられる。しかし、一介のフリーライターが警察から情報を得るのは難しい。
そこで筆者は「なぜ突然3事件の関与を認めたのか」を本人に聞くため、大阪で活動している弁護士の中道一政氏に勝田容疑者への接見を依頼。11月10日夜間の接見で本人からの伝言を得た。
「刑事さんが背中を押してくれ、自分でも人として、人間の心を忘れてはいけないと思ったことから、すべてを認めることにしたのです」
逮捕前、9月12日付の手紙で、勝田容疑者は筆者にこう告げている。
〈事件の真相をこれから正直に、有りのままにお話ししていきますので、ユキ女史は面白可笑しく書いてくださいねっ。〉
重大かつ凶悪な事件を“面白可笑しく”書くなどという約束は到底できないが、今後も彼の言葉を聞き続けるつもりだ。
【プロフィール】
高橋ユキ(たかはし・ゆき)/1974年、福岡県生まれ。ノンフィクションライター。2005年、女性4人の傍聴集団「霞っ子クラブ」を結成しブログを開設。以後、フリーライターに。主に刑事裁判を傍聴し、さまざまな媒体に記事を執筆している。『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』(小学館文庫)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』(小学館新書)など、事件取材や傍聴取材を元にした著作がある。
※週刊ポスト2024年11月29日号