ライフ

【追悼・火野正平さん】「昭和の色男」に女性と楽しく接する極意を学ぶ

火野正平

年齢を重ねても魅力的だった

 時代とともにアップデートが必要なのは間違いないが、さりとて歴史に学ぶことも重要だ。コラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
「俺と握手すると妊娠するぞ」

 火野正平さんのこのセリフ、最高です。自転車に乗って日本全国を巡る旅番組「にっぽん縦断 こころ旅」(NHK BSプレミアム)のロケで、女性に「正平さん、握手してください!」と頼まれると、いたずらっぽく笑ってこう返しました。

 若かりし頃に多くの女性と浮名を流し、「昭和を代表するモテ男」「希代のプレイボーイ」と呼ばれ、70代になっても男の色気がたっぷり漂う火野さんだからこそ、自分をネタにした冒頭のセリフが面白さと深い味わいを醸し出します。言われた女性のみなさんは、きっと素敵な思い出になったことでしょう。

 そんな火野正平さんが11月14日、75歳で帰らぬ人になってしまいました。最近も映画『ラストマイル』で宅配ドライバーの渋いオヤジを演じて存在感を放っていたのに、また元気に自転車で旅をする姿が見られる日を楽しみにしていたファンがたくさんいたのに、とても残念です。謹んでお悔やみ申し上げます。

火野正平さんが教えてくれた「モテ男」のお作法

 火野さんはたくさんの「モテ男伝説」を残してくれました。14年にわたった「こころ旅」の中で女性と接する姿も、さすがとうならずにはいられませんでした。そこには、私たち中年男性が学ぶべきポイントがたくさんあります。今の世の中が忘れかけている、というより頭でっかちに否定している「昭和のお作法」の美しさを見ることができます。

 追悼の気持ちを込めて、あとに続く世代の昭和人間の責務として、火野さんの「モテの秘訣」や「女性と楽しく接する極意」を謹んで授かるとしましょう。もちろん、火野さんを見習えばモテるとは限りませんが、大切なのは夢を忘れない心意気です。

●火野さんの教えその1「すべての女性に分け隔てなく接する」

「こころ旅」での火野さんは、若い女性にも高齢の女性にも小さな女の子にも、同じように敬意と親しみを持って接していました。また、記憶している限りでは「かわいい」とは言っても、「美人だね」などの容姿を評価する言葉は口にしませんでした。そこに火野さんの女性に対する広く深い愛を感じます。

●火野さんの教えその2「女性が大好きということを隠さない」

 過去の十分な実績が広く世間に知れ渡っていたこともありますが、火野さんは「女性が大好き」という基本姿勢を隠そうとしませんでした。そのイメージで見られることを楽しんでいた節もあります。女性としては、自分を好意的に見てくれていることがわかっているだけに、安心感を抱きつつ伸び伸びと接することができたでしょう。しかも、下心をチラッと見せつつ、けっして本気ではないんだよという気配の示し方も絶妙でした。

●火野さんの教えその3「昭和なオヤジギャグで場をなごませる」

 冒頭の「俺と握手すると妊娠するぞ」のほかに、写真をねだられて「俺と写真を撮ると妊娠するらしいよ」と返すバージョンもありました。妊娠9カ月の妊婦さんのお腹にさわりながら「去年、俺たちちょっとワケありでさ」と言っていたこともあります。いずれも令和の基準で言えば、眉をひそめられても仕方ない「不適切」なジョークです。

 しかし、火野さんのちょっとエッチなオヤジギャグは、間違いなく相手の女性を幸せな気持ちにしていました。放送されなかったやり取りもあったでしょうが、女性が怒り出す展開は想像できません。もちろん「火野さんのお人柄があってこそ」という前提はありますが、男女のコミュニケーションの機微をコンプラで縛る無意味さをひしひしと感じます。

関連記事

トピックス

佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
大型特番に次々と出演する明石家さんま
《大型特番の切り札で連続出演》明石家さんまの現在地 日テレ“春のキーマン”に指名、今年70歳でもオファー続く理由
NEWSポストセブン
NewJeans「活動休止」の背景とは(時事通信フォト)
NewJeansはなぜ「活動休止」に追い込まれたのか? 弁護士が語る韓国芸能事務所の「解除できない契約」と日韓での違い
週刊ポスト
昨年10月の近畿大会1回戦で滋賀学園に敗れ、6年ぶりに選抜出場を逃した大阪桐蔭ナイン(産経新聞社)
大阪桐蔭「一強」時代についに“翳り”が? 激戦区でライバルの大阪学院・辻盛監督、履正社の岡田元監督の評価「正直、怖さはないです」「これまで頭を越えていた打球が捕られたりも」
NEWSポストセブン
ドバイの路上で重傷を負った状態で発見されたウクライナ国籍のインフルエンサーであるマリア・コバルチュク(20)さん(Instagramより)
《美女インフルエンサーが血まみれで発見》家族が「“性奴隷”にされた」可能性を危惧するドバイ“人身売買パーティー”とは「女性の口に排泄」「約750万円の高額報酬」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン
悠仁さまの通学手段はどうなるのか(時事通信フォト)
《悠仁さまが筑波大学に入学》宮内庁が購入予定の新公用車について「悠仁親王殿下の御用に供するためのものではありません」と全否定する事情
週刊ポスト
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”の女子プロ2人が並んで映ったポスターで関係者ザワザワ…「気が気じゃない」事態に
NEWSポストセブン
すき家がネズミ混入を認める(左・時事通信フォト、右・Instagramより 写真は当該の店舗ではありません)
味噌汁混入のネズミは「加熱されていない」とすき家が発表 カタラーゼ検査で調査 「ネズミは熱に敏感」とも説明
NEWSポストセブン
船体の色と合わせて、ブルーのスーツで進水式に臨まれた(2025年3月、神奈川県横浜市 写真/JMPA)
愛子さま 海外のプリンセスたちからオファー殺到のなか、日本赤十字社で「渾身の初仕事」が完了 担当する情報誌が発行される
女性セブン
昨年不倫問題が報じられた柏原明日架(時事通信フォト)
【トリプルボギー不倫だけじゃない】不倫騒動相次ぐ女子ゴルフ 接点は「プロアマ」、ランキング下位選手にとってはスポンサーに自分を売り込む貴重な機会の側面も
週刊ポスト