臨時国会では「政治とカネ」をめぐり与野党が論戦を交わしているが、石破茂・首相に政治改革を唱える資格があるとは思えない。先の総選挙中に明るみに出て、自民惨敗の“決定打”となった「裏金候補への2000万円支給」──今回改めて候補者(出納責任者)が選挙後に選挙管理委員会に提出しなければならない「選挙運動費用収支報告書」から各候補の選挙資金の出所を調査すると、“裏金議員”として自民党非公認となり「無所属」で出馬した候補が、「党支部」の資金で選挙を戦っていたという事実が浮かび上がってきた。【全3回の第3回。第1回から読む】
選挙に使うことを禁止する記述がない
今回の問題は、個別の裏金候補よりも、石破首相ら自民党執行部により重大な責任がある。
自民党は公認候補の支部に「公認料500万円+活動費1500万円」の計2000万円、非公認候補ら8人の支部には「党勢拡大のための活動費」と名目を変えて同じ2000万円を支給した。
森山裕・幹事長名で各支部の会計責任者に送付された「支部政党交付金支給通知書」によると、公認候補への通知書には、〈選挙運動費用に充てる場合、貴支部から候補者への寄附として支出してください〉と書かれ、選挙運動費用収支報告書に必ず報告するようにとの注意書きがある。
一方、非公認候補の支部への「支部政党交付金支給通知書」にはそうした記載はないが、選挙費用に使うことを禁止する記述もない。
総選挙の公示後、選挙費用がかかるタイミングで支給されたことから見ても、石破首相や執行部の「選挙資金ではない党勢拡大の活動費」という説明にはあまりに無理がある。実際、2000万円の入金後に非公認候補が党支部のカネを選挙のために出金していた。
本当に党勢拡大の活動費として非公認候補に配ったなら、それこそ公認候補には公認料などと別に「党勢拡大」の2000万円を支給しなければおかしいし、当然、参院議員にも2000万円配らないと辻褄が合わない。
政治資金を追及してきた上脇博之・神戸学院大学教授は、政党助成金を受け取る支部の口座が別に分けられているという説明についても、「2000万円が入れば支部の資金繰りが楽になるから、支部会計から選挙資金を出しやすくなる。党本部はそれを承知で配ったのでしょう」と断じた。
「なぜこんなことができるかというと、自民党の支部は各議員の政治献金の受け皿で、議員が自分の政治団体のように使い放題にできるという実態があるからです。自民党本部もそれを認めてきた。この際、自民党は非公認候補に資金を返金させ、支部を解散させるべきです」(上脇氏)