このレベルでは「補強」とは言えない
〈今季の巨人は捕手として、岸田行倫、小林誠司、大城卓三の3人を併用。それに加えて甲斐が必要なのか、という議論もある。失敗したが大山や石川の獲得にも乗り出した。そうした状況は、豊富な資金力で選手を集めようとする“いつものジャイアンツ”にも見えるが、巨人OB会長の中畑氏は「これまでの“欲しい欲しい病”とは違う」と断言した。
中畑:(今オフの動きは)レベル的に“補強”っていう言葉を使う必要もないのかなと思う。「ある程度安心して任せられる選手がほしいな」っていうレベルじゃない。それが1枚取れるのか、2枚取れるのか、3枚取れるのか……。それを他球団と競争しているわけだけど、そんなにまでして競争する相手ではなかったような気がするけどね。
江本:巨人は今年のFAに参戦する必要はなかったと思いますよ。
中畑:たしかにその通り。巨人はリーグ優勝しているチームだよ。そういう意味では今年、FAで選手を獲得できても“補強”と呼べるものにはならなかったと思う。
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レジェンドOBの論評は辛口である。巨人の球団関係者からは「FA参戦はチーム内に刺激を与えて競争意識を高める目的もあった」との声も聞こえるが、今オフの動きは、果たして来季のどのような結果につながるのか。
【プロフィール】
江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。71年に東映入団。72年に南海に移籍しエースとして活躍。76年に阪神に移籍し、81年の引退後は参議院議員、タレントとしても活躍。近著に『ミスタードラゴンズの失敗』(扶桑社)。
中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。76年に巨人入団。ムードメーカーの「絶好調男」としてチームを引っ張った。引退後は12~15年にDeNAの監督を務めた。現在は巨人OB会の会長を担っている。
達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。78年、広島に入団し正捕手として活躍。引退後は広島監督や阪神などでコーチを務め、ソフトバンクでヘッドコーチとして日本一を経験した。