集まった聴衆が動物に想いを巡らせたところで、寄席が開幕。そのテーマに添って「猫と金魚」や「牛ほめ」「後生鰻」といった動物にまつわる落語が次々と披露された。大いに笑って楽しみながら、動物をより身近に感じられる機会となった。
演目が終了すると出演者や伍代と共に杉も登壇し、「震災では悲しいことに、たくさんの動物が命を落としました。先進国としてどうなのかと、疑問に思います。命を平等に扱う、やさしい気持ちを汲んで活動にご理解をいただけたら嬉しい。防災をテーマに寄席を開くにあたって、そう考えました」と訴えた。
杉は保護犬の増加にも心を痛めているといい、伍代と進める新しいプロジェクトにも触れた。法務省特別矯正監を務める立場として、受刑者の職業訓練の新展開に保護犬の育成事業を組み込む考えがあるという。
「野犬を刑務所で引き取って少しでも殺処分される犬を救いたい。ドッグトレーナーからノウハウを学んだ受刑者が保護犬の世話をして、家庭で育てられるように訓練するんです。(法務省の)矯正局を通じて呼びかけたら、ぜひプロジェクトに参加したいと希望する受刑者が大勢いるとわかりました。犬に愛情を注ぎ、犬から優しさをもらう。受刑者の心の教育にもなる。愛を学ぶことで更生を促します」(杉)
刑事施設の職業訓練は、受刑者の再犯防止と社会復帰を目的としている。伍代も、「職業訓練を通じて受刑者がドッグトレーナーやトリマーの免許をとることもできます。社会復帰した際にも、スムーズに職に就けるのではないかと杉さんと話しています」と思いを明かした。
この日、杉夫妻はスーツとワンピースの色合いがともにチョコレートブラウンで、偶然にもリンクコーデとなった。報道陣から夫婦仲の良さに質問が及ぶと、伍代は“子はかすがい”とママの顔で愛犬を語った。
「私たちは結婚してもう25周年、銀婚式です。会話のある夫婦だとは思いますが、それでも慣れてくると疲れた時には会話が少なくなることもあったりして(笑い)。でもそこにワンちゃんがいると会話が弾むんです。りくとそらを迎えて本当に良かった」
そして、長男・りくと初めて対面した杉の様子を回顧。
「黙って飼い始めたのでどんな反応をするかドキドキしましたが無言で、てのひらぐらいの大きさだった赤ちゃんのりくをずっと手に抱いていました。今では夫婦揃ってメロメロで、べたべたの4人家族なんです。りくとそらもパパが大好き。ね、杉さん?」
伍代から話を振られると杉は目尻を下げて「ウン」と小さく頷き、「何もしゃべらなくても犬たちの気持ちや訴えがわかる」と日常を語った。
あたたかい空気に満たされた寄席は演者と聴衆で集合写真を撮って、幕を閉じた。杉は今後も社会的に意義のある寄席を続けていきたいと抱負を語り、目の前のカメラに微笑んだ。