少なくとも、かつての「日雇い労働者の街」としての西成の性格は失われつつあるのだ。
現在も肉体労働を続ける前出の西岡氏は「労働者はあんなところ(センター)に用ないやろ」と話しつつ、こんな心境を明かしてくれた。
「個人的にはセンターはそのままでええよ。はよ潰したいのもわかんねんけど、いうたら西成のシンボルやから。あれがなくなったら西成が西成でなくなると思うで。俺からしたら勝手に崩壊するまで放っておいたらええ。それが西成やん。俺みたいなスネに傷のある人間は綺麗な場所にいると落ち着かんから西成におるんや」
「街を綺麗にすればすべて解決」と考えているのなら、住人の立場からすると乱暴すぎるだろう。
【取材・文】
國友公司(ルポライター)/1992年生まれ。筑波大学芸術専門学群在学中よりライターとして活動。著書に『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』『ルポ歌舞伎町』(ともに彩図社)など。
※週刊ポスト2024年12月27日号