難しい「兵士のセックス管理」
次の記事を見ていただきたい。
〈ライダイハン ベトナム戦争時の韓国軍の所業を英BBCが報道
英国の公共放送である英国放送協会(BBC)が3月にベトナム戦争当時の韓国兵による女性への性的暴行を特集で伝えたことが、日韓外交の関係者らの間で反響を呼んでいる。韓国政府は国連の場でも、旧日本軍のいわゆる慰安婦問題を再三取り上げてきたが、ベトナムでの自国兵の行為について謝罪はしていない。BBCは、韓国の二重規範についても指摘している。 BBCは3月27日、ウェブサイトに、「1968-何百人もの女性を苦しめた年」と題した記事を掲載し、韓国軍兵士から被害を受けた2人のベトナム人の境遇を詳しく伝えた。そのうち1人は性的暴行を受け、3人の子供を身ごもった女性だった。
ベトナム戦争時に韓国軍兵が現地の女性を性的に暴行するなどして生まれた混血児は、「ライダイハン」の蔑称で呼ばれ、ベトナムで差別を受けてきた。その数は定かでないが、5000~3万人に上るとの説がある。(以下略)〉
(『産経新聞電子版』2020年4月4日付 原川貴郎記者)
ちょうどいまロシアのプーチン大統領が北朝鮮に援軍を依頼したように、ベトナム戦争のときにアメリカは韓国に精鋭部隊の派遣を依頼した。その結果がライダイハンである。彼らの父親は兵士だけで無く一緒に派遣された技術者もいたようだが、とにかく彼ら韓国人が子供を見捨てて帰国したのは事実だ。そうでなければこんな大問題にはならない。また、ベトナム戦争の主役であったアメリカ軍もこうした問題とは無縁では無い。しかし日本では、ライダイハンのことはこの産経新聞の記事もそうだが、韓国の主張する「従軍慰安婦」問題への「反撃」として紹介される場合が多い。この記事の結びも以下のようになっている。
〈〈BBCの記事は〉ストロー元英外相が「国際大使」として関わる民間団体「ライダイハンのための正義」が、国連人権理事会による調査や韓国側の謝罪を求めていることも伝えた。
さらに「韓国は、第二次世界大戦中に、何十万人もの韓国人女性が性奴隷として働かされたことをめぐり、謝罪をするよう何十年も日本に働きかけてきた」と指摘。「何十万」という数字や「性奴隷」といった表現には問題があるものの、日本に謝罪を求めながら、自らの問題には頬かむりする韓国の姿勢を浮かび上がらせた。〉
イギリスのこの問題に対する救援団体も、「ライダイハン」と「慰安婦」の問題を同次元のものとしてとらえているようだ。しかし、私はこういう見方には異論がある。ここでちょっと考えていただきたい。ベトナム戦争で韓国軍が展開していたのは、わずか数年である。だが、最低でも五千人ものライダイハンが生まれた。
では、中国が非難してやまない日本の満洲事変以降の侵略で、日本人兵士が現地女性をレイプすることによって生まれたライダイハンのような混血児がどれぐらいいたか、あらためて考えていただきたいのだ。もちろんゼロでは無いだろうか、数はきわめて少ないはずだ。少なくとも何千人という単位では無い。では、なぜ野獣と化した兵士たちの性欲をコントロールできたのか? もうおわかりだろう、慰安婦がいたからだ。
つまり、日本軍というのはさまざまな批判があるが、少なくとも兵士のセックス管理についてはもっとも早くからきちんと考えていた軍隊なのである。だからこそ慰安婦制度はすべて正しいなどと言うつもりは無い。そもそも物事や組織が「すべて正しい」とか「すべて悪だ」などと決めつける考え方では歴史は語れない、と申し上げているのだ。