日本では現実的ではないが、こうした方式を望む現役世代は少なくないとされる。
「私たちが高齢者になった時、現在の高齢者のような厚遇を受けられると思えないです。正直な気持ちです」
こうした意見は世代間対立を煽ると批判する向きもあるが、彼の言う通り現実問題として現在の高齢者と現役世代との逆格差もまた現実である。いわゆる「シルバー民主主義」は60代以上の年代別投票率が70%超えなのに対して40代が50%代、30代は40%代、20代に至っては30%代と選挙に行かない人のほうが多い(総務省)。当然、政治は高齢者に向けたものになる。
先の衆院選でこれまでにない現役世代による政治運動がSNSなどで活発になったのもこの危機感にある。それでも選挙に行かない現役世代のほうが多くても意識そのものは変りつつある。というか、本当に現役世代の引かれるお金が増え続け、使えるお金が減り続けている。それがずっと続いているからみんな怒っている。
雇う数をさらに減らすか
いっぽう、中間層とされる年収460万円前後(国税庁民間給与実態統計調査・令和5年分)、とくに子育て世帯となるとさらに厳しさは増す。使えるお金の減る分は多くがパートで補っている。
北関東、パートの妻と未就学の子どもひとりの世帯を持つ40代中小企業勤務の男性が語る。
「事情があるのでフルタイムで妻は働けません。子どもも小さいですし、女性の正規職も少ない土地です。だから103万円の壁引き上げには期待していますが、106万円の壁とかもでてきて何がなにやら」
散々メディアで説明されているが「103万円の壁」とは基礎控除と給与所得控除を合わせて103万円の年収を超えると所得税が発生するので働き控えをしてしまう、控えざるをえない、ゆえに178万円まで所得税の基礎控除などを引き上げて欲しいという訴えである。これを主張し続けた国民民主党躍進の一因ともなったが、蓋を開けてみれば政権与党である自公は財源を損なう恐れがあるとして所得税の控除額を現在の103万円から123万円にとどめる案を示した。
この税金「103万円の壁」の178万円引き上げで働ける時間が増え、実質的な減税にもつながると期待されたが自公は123万円を主張、それどころか社会保険「106万円の壁」のほうがあっさり撤廃になりそうな話になってしまった。
「パートで厚生年金を払うって、手取りも減るってことですよね、どうしてこんなことに」
これまで厚生年金は「企業規模要件」の従業員51人以上、週20時間以上、月額8万8000円以上の年収換算「106万円以上」の賃金を受け取る労働者(学生除く)が対象だったが、今回の了承で賃金要件が撤廃されて週20時間以上働けば原則、厚生年金の加入対象者になる。個人事業所も5人以上いれば2029年を目処に加入対象とする方向で調整されている。