男性アナウンサーとして局内を活性化
この件を取材して見えてきたのは、「先輩アナたちは上垣アナが不安なく仕事ができるように務め、一方の上垣アナも批判を受けた先輩アナを気づかう」という温かい関係性。「騒動によって両者の間に距離ができてしまい、上垣アナの成長機会が奪われる」という最悪のケースは避けられたようです。また、制作サイドも上垣アナに過剰な負担を与えないように配慮しながら起用している様子が感じられました。
ただ、短期間でこれほどの注目を集める人気者だけに、少しでも失言したら「こんな人だと思わなかった」などと叩かれてしまうリスクは免れません。さらに当然ではありますが、まだ「新人にしては凄い」という評価の段階だけに、「新人にしては」の印象が取れたときが本当の勝負。ポテンシャルに加えて、局の活性化やイメージアップなども含め、期待が大きいだけに「大切に育てていきたい」という思いが局全体から感じられます。
先日、アナウンス室の競馬班に所属することが発表されましたが、これは上垣アナが目標として公言していたこと。モチベーションアップになるとともに、よく考えてしっかり準備する上垣アナなら局の粋な抜てきに応えられるのではないでしょうか。
もともとテレビ局における男性アナウンサーという立場は、女性アナウンサー以上に繊細なところがあります。脚光を浴びるのは女性アナウンサーに偏りがちで、フィーチャーされるとしたら失言や不祥事などのネガティブな話題が多く、報われづらいのがつらいところ。
さらに制作現場では、同じ局員から使われる側の立場であり、しかもタレントのような配慮はされません。スペシャリストとしてのプライドはあるものの、指示を忠実にこなすことが基本的な仕事であり、出役でありながらも決して華やかな仕事ではないのです。
現段階で上垣アナへのやっかみなどはほとんど見られないものの、人気者になりすぎると多少「面白くない」と感じる人が出てきてもおかしくはないでしょう。それを避けるためには、繰り返しバラエティへ呼ぶなどアナウンサー個人の魅力を消費するような起用だけは避けてほしいところです。
いずれにしても、早々の人気、局内の期待ともに、男性アナでは過去最高クラスの逸材であることは確かであり、今後の活躍が楽しみなのは間違いありません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。