自公国の連立の可能性
年末の税制協議では自民と国民民主の「103万円の壁」引き上げ交渉が決裂。玉木氏は、「こういう状況であれば2025年度の本予算にはなかなか賛成するのは難しくなってきた」と批判した。
衆院で過半数を持っていない石破首相にすれば、国民民主が反対に回れば予算案を成立させられない。政権は絶体絶命の危機に陥る。
そこで首相が国民民主の要求を受け入れれば“落とし穴”にはまる。前出の藤本氏が語る。
「103万円の壁引き上げには税収が減る全国知事会など地方の首長が猛反対している。首相サイドには財源として企業や業界への優遇税制を縮小・廃止する案もあるが、これをやると企業や業界団体という自民党の選挙基盤に反発が広がり、3月の党大会で参院議員や地方議員から『夏の参院選を戦えない』と石破首相の責任を追及する声が噴き出す可能性が高い」
自民党の党則には、「国会議員及び都道府県連代表の過半数の要求」で総裁選を実施できる事実上の総裁リコール規定がある。政治評論家の伊藤達美氏は、「総裁選になれば高市早苗、林芳正、小林鷹之の争い」と見る。
「現在の自民党の苦境を招いたのは岸田前首相です。総裁選が実施されることになれば話し合いですんなり岸田さんの再登板とはならない。前回2位の高市さんは闇バイト対策を提言するなど活動を再開しており“次こそは”と出馬するし、小林さんも出るでしょう。岸田前首相ではなく林さんを担ぐ勢力も出てくる」
自身の退陣後にそうした“混迷の総裁選”へと突入するのを避けるべく、3月危機で石破首相が国民民主の要求を突っぱねると、予算案が通らない。
その時に第2の政変シナリオに向かう。予算成立のメドが立たずに追い詰められた石破首相が、退陣を条件に野党の協力をとりつけ、予算を成立させて退陣するというシナリオだ。
過去には竹下登・首相が予算案を3月末に成立させられず、新年度の4月に退陣表明と引き替えに成立させたことがある。
だが、2つの政変シナリオともに、たとえ石破首相退陣で自民党総裁が交代しても、自公連立の少数政権のままでは法案を成立させることができない状況に変わりはない。
そこで浮上するのが「玉木首相」の誕生だ。