入門から所要9場所、新入幕から5場所という大関昇進のスピード出世記録を塗り替えた大の里。9月の秋場所で2度目の優勝を飾り、綱取りも秒読みと見られていたが、横綱昇進へのスタートラインとなるはずだった11月の九州場所では後半に失速した。
終盤には先輩大関にあたる豊昇龍と琴櫻に連敗。新大関場所は9勝に終わり、王手をかけていた年間最多勝も琴櫻に譲ることになった。九州場所では存在感を見せつけるどころか、千秋楽は先輩大関同士の相星決戦に。初場所では優勝した琴櫻と準優勝の豊昇龍が綱取りに挑戦することになった。二所ノ関一門の若手親方が言う。
「九州場所の後半戦は腰高となり、相手の攻めに棒立ちになる場面が多かった。そのため相手の投げを簡単に食らったり、中に入られて押し出された。終盤の上位陣との対戦ではスタミナ切れも気になった。相手も百戦錬磨のプロたち。大の里の相撲をよく研究しており、右を差させないようにおっつけるなど工夫をしている。大の里はもっと引き出しを増やさないと上を狙うのは厳しいのではないか」
12月1~21日には、九州と西日本を中心に14か所で冬巡業が行なわれた。相撲担当記者はこう話す。
「2場所連続休場中の横綱・照ノ富士が、宝塚巡業(12月12日)の朝稽古に登場した。巡業では土俵入り専門だったが、久々に横綱・大関の三番稽古で土俵に上がった。同じ右四つの大の里を指名して8番取って、4勝4敗。胸から当たって、右四つからどちらかが土俵際まで持っていくかというお決まりの稽古だったが、照ノ富士も進退をかけて初場所の土俵に上がるようだ。
照ノ富士復活もないとは言えないが、横綱不在が現実となる可能性のほうが高い。つまり、協会としてはハードルを下げてでも横綱を誕生させたい。3大関の誰がこの“追い風”に乗るかが注目です。初場所で琴櫻と豊昇龍がダブル昇進することになれば、“追い風”は止んで、大の里の綱取りは高いハードルに戻ることになるでしょう」