そんな軽い気持ちで作ったラップをコンサートで歌ってみたらファンに好評で、「ちゃんと1曲にまとめなさい」とレコード会社に言われました。でも、当時は僕もKAZUくんも遊ぶのに忙しく(笑)、結局、作家先生にまとめてもらいました。だから、クレジットは「作詞 岡田冨美子・S.I.S/作曲 後藤次利」。「S.I.S」は「シブがき隊・板前・スペシャル」の意味で、印税はみんなで分けています。だから、ヒットしたといっても僕に入った印税は大したことはなくて(笑)。KUZUくんと「自分らでやっておけばよかった! 失敗したね」と笑っています。でも、儲けようと思っていなかったからこそ、おもしろいものができたんじゃないかな。
1曲にまとめてもらった後、レコード会社がNHKの『みんなの歌』に売り込んだら採用され、子どもたちにも大ウケ。それで、紅白も『スシ食いねェ!』で、ということになりました。僕は『みんなの歌』なんて番組があることさえ知らなかった(笑)。もっといえば、歌ができた当時、「シブがき隊」の3人はまだ18、19歳。3人ともカウンターのある寿司屋で食べたことはなかったし、当時は回転寿司店もそれほど普及していなかったから、回転寿司も食べたことがなかったんです。
なのに、『スシ食いねェ!』が今も多くの人の記憶に残り「シブがき隊」の代表曲になるのだから、不思議なものですよね。
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫