悲しみに向き合うことは「重荷」ではない
「前を向かないと生きていけない」と話す大間さんがチャレンジしたのは、10月27日に行なわれた金沢マラソンだった。当日はランニングウェアに家族4人の写真を貼って、42.195キロを完走した。大間さん一家は、家族で度々マラソンの練習をしていたという。
「3月の下旬くらいに1人で練習を始めた頃は、泣きながら走ってたんですけど。徐々に、子供たちが一緒に走ってくれるような、体を押してくれるような時間に変わっていった。震災直後は、夜はお酒を飲まないとなかなか寝付けなかったんですけど、練習を始めたくらいから徐々に寝つけるようになりました。
マラソンが終わって、今は具体的な目標はないですけど、今後も1日1日を無駄にせずに生きていきたい。やっぱり私は、生かされた命なので。子供たちや妻が生きたくても生きられなかった時間を、自分が大切に、一生懸命生きなきゃいけないと思うんです」
悲しみに正面から向き合い続ける大間さん。失ってしまった家族のために生き続けることは、時に「重荷」になるのではないか——そう問うと、大間さんは「ああ、それはないですね」と即答した。
「自分1人だったら、自分がしたいことをして終わりだと思うんです。そうじゃなくて、子供たちがきっとこんなことしたかっただろうな、とか、妻が好きだったなと考えると、自分が特にしたいと思ってないことでも“しよう”と思うんです。
そういうことをすることで、自分だけでは感じられなかった世界や、気づけなかったことに気づける。それが、本当に僕の人生を彩ってくれているんです。だから、重荷に感じたことはないですね」
最後にひとつ、聞きたいことがあった。1人の時間と向き合い続けた大間さんは、今後も1人で生き続けるのか。