「常連であることが誇らしい」
そんな親子のやりとりをつゆ知らず、客らは和気藹々とよくしゃべる。「あれを頼む」「これちょうだい」と注文を入れて、飲みっぷりも食べっぷりもいい。一体感のある盛り上がりぶりに、親戚の会合かと錯覚するほど親し気だが、「ほとんどが”ソロ”(一人)客」だという。
「ここはな、誰の隣になっても話に花が咲くねん」(40代、工場勤務)、「みんなフレンドリー、居心地最高や」(50代)と連日賑やかに酒と笑顔を交わしている。
楽しそうにゆっくりと杯を傾ける70代のスナックママは、「休みの日はここで飲むのが習慣」だという。「ここはお酒が好きな人らがニコニコしながら飲むねん。眺めてるだけでも幸せな情景やね」。
“村長”というニックネームの50代は、「こんなに客筋がええ店は滅多にないよ。固まったり、壁を作ったりせえへんねん。店主を慕って家族みたいになってまうねん。思うに、どの駅からもちょっと遠いというのがミソやね。『来れる人だけおいで』と言われてるみたいで、『わざわざ行ったるわ』と客心が燃えるっちゅーかな」。
「生まれて初めて”常連”になったのがここなんです」という30代は、「僕は週に8日来てます(笑い)。超あたりの店を発見!と思いました。雰囲気がええ、お客さんがええ、料理がうまいし、言うことなしですわ。常連であることが誇らしい店」と満面の笑みを浮かべて語る。
「マスター(店主)は、日中は商店街や東部市場に足繁く通ってるよ。目利きは確かや。忙しさを縫って、食材を自分の目で見て、美味しいもんを仕入れてるんやと思うで」と目撃談を教えてくれる常連客(60代)もいた。誰もが、店や店主に興味津々なことが伝わってくる。
「そんなこと言うてる人、いましたか。見られてるなあ」と店主。「カウンターの中から見ていますと、ここで友達になっている人が多いなあと思いますよ。うちは古い店構えで、外から見たら一瞬、入りにくいと思うんですよ。だけど、戸を開けると中は全然違うでしょ? 我ながら不思議な店やと思います。とにかく、美味しいものを提供していきたいです」。
「ほな、ここで一発、乾杯しょうかー」と村長が音頭をとった。
彼らが手にしているのはいつもの焼酎ハイボール。
「スッキリしていて絶品料理に相性抜群やね」(50代・物流)
■酒類販売 立呑処 いりべ酒店
【住所】大阪府大阪市平野区長吉六反1-3-6
【電話】06-6790-5887
【営業時間】16時半~22時 日曜定休
焼酎ハイボール120円、ビール大びん480円、まるはげのお造り700円、豚スペアリブの赤ワイン煮440円