「実は“男の子を授かれたら、歌舞伎役者にしたい”というのが、僕の長年の夢だったんです。だけど、いざ生まれたら、“自分の夢を子どもに押し付けるのはどうなんだろう”って考えるようになりました。もちろん、稽古場に連れて行ったり、舞台を見せたりと、文化自体に触れさせたい気持ちはありますし、もし日本舞踊や芸能界に興味を持てば、その道筋をサポートしていきたいです。
でも、周囲から変な期待がかかるというか、“できてあたり前だよね”みたいな空気を感じることが自分もあったので、苦労する面も出てくるだろうなと」
理想の父親像については、「ないですね」とキッパリ。16歳で両親が離婚してから、2017年に松方さんが亡くなるまでの約19年間、親子関係は絶縁状態にあった。「実は松方さんとは“普通の親子”とは程遠く、師匠と弟子みたいな関係性でした。普通の親子みたいな会話もほぼなかったように思います」という。しかし、数奇な“縁”を感じるという。
「松方さんは42歳の時にパイプカット(精子の通り道を塞ぐ避妊手術)をしていたことを公言していました。かたや僕は、同じ42歳で不妊手術の末、ひとつの命を授かった。運命的とは言わないですが、なんだか不思議な気持ちがします。
結局、松方さんとは関係を修復できずじまいだったけれど、もし今会えたら、“僕を作ってくれてありがとう”と伝えたいです。彼のおかげで、僕、そして息子と、生命のバトンがつながったわけですから」