明治学院大学名誉教授・原武史氏(左)と名古屋大学准教授・河西秀哉氏

明治学院大学名誉教授・原武史氏(左)と名古屋大学准教授・河西秀哉氏

佳子さまの単独公務は離脱へのラストスパートか

河西:女性皇族の問題を考えるうえで愛子内親王の存在も無視できません。

原:世論調査では女性・女系天皇に賛成派が多数ですが、皇室内は宮中祭祀も含めて厳然たる男女の「差」がある。世継ぎのプレッシャーがあるなか、雅子皇后としては自分が苦労してきたことを娘にやらせたくないと考えても不思議ではない。愛子内親王が結婚して皇室を出ることを望んでいるのではないでしょうか。

河西:愛子内親王は日本赤十字社に就職し、公務も少ない。雅子皇后が過酷なバッシングを受けたことをわかっているから、自分が母を助けたいとの思いが強いはずです。雅子皇后が名誉総裁を務める赤十字で働くのもそのためかもしれません。

原:被災地への訪問でも、天皇と皇后は一緒に動くのに対し、秋篠宮夫妻は別々に動く。皇后の体調が万全でないことから愛子内親王は両親と共にいるイメージですが、佳子内親王は自分の考えで動いているように見えます。

河西:最近の佳子内親王は公務が増えていますが、結婚、そして皇籍離脱に向けた“ラストスパート”のようにも感じます。

原:皇族減少は喫緊の課題なのに、なぜ中からも皇室のしきたりを変える動きがないのか疑問です。例えば宮中祭祀はほぼ明治以降の“作られた伝統”です。戦後は皇室の私事になり、国民に諮らずとも変えられるはず。明治天皇も大正天皇も総じて祭祀には熱心でなく、全部の祭祀に出るようになったのは昭和天皇からでした。その姿勢を上皇と天皇も受け継いでいます。上皇は「国民の安寧と幸せを祈ること」、つまり宮中祭祀を象徴の務めの一つとしたので、なかなか変えられないのでしょう。

河西:いまの自民党が皇室典範改正にどう向き合うか注目です。

原:石破茂首相はもともと女系天皇の容認を含めて議論すべきとの立場でしたが、総裁選を僅差で勝利したため保守派に気兼ねし、石破色を封印しました。しかし今年は女性・女系天皇の議論が息を吹き返す可能性があります。石破首相が目指すのは安倍政治の終焉です。この目標を達すれば、再び柔軟な天皇論を打ち出してくるのではないか。

河西:確かに、最近は夫婦別姓でも持論に回帰しつつあります。国民の多数が支持する女性・女系天皇容認に賭ける可能性はゼロではないでしょう。

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