いまやトクリュウの時代
溝口:警察はどこまでやるのか……それはわかんないね。しかしヤクザはもはや終わっている。オワコンです。警察が目の敵にして叩く理由がよくわからない。
鈴木:昨年、強盗事件を頻発させた闇バイトとトクリュウを見てもわかりますよね。
溝口:トクリュウって、つまり半グレだからね。トクリュウが詐欺を働きました。この金は暴力団の資金源になっている恐れがあります……警察の言い分を無批判に繰り返す。それが今の新聞やテレビのジャーナリズムだよ。
鈴木:稲川会碑文谷一家は事務所前に「昨今、闇バイト、オレオレ詐欺、強盗等多発しておりますが それらの者、組織、団体には碑文谷一家の縄張りに於いて、当家は断固たる処置を取ります(品川区、大田区、世田谷区一部、目黒区一部)」という告知を出しました。
溝口:そもそもトクリュウというか半グレたちは、暴力団になるのは馬鹿らしいと思ってる人種です。ヤクザを哀れんでも、貧乏暮らしのヤクザに憧れなんかない。
鈴木:半グレって、ヤクザになれなかった中途半端な人間ではなく、ヤクザの進化形と考えたほうが実情に近いような気がしています。実際に半グレのボスたちに会うと迫力に圧倒されます。昔のヤクザのように、配下に20代、30代の若い衆がたくさんいて懐かしいです。
溝口:トクリュウのほうがどう見たって頭がいいですよ。新しいシノギを思いつくだけでも明白です。でも警察は馬鹿のひとつ覚えのように「暴力団の資金源になる恐れがある」と付け加える。それを記者クラブが垂れ流し、ヤクザは反社の王という虚像ができあがる。
鈴木:暴力団やトクリュウを見ると「時代は変わる。変化に対応できない者は滅びる」という陳腐で、ありきたりな結論になる。ただしその結論は、弱肉強食の世界だけに痛切で、強烈に伝わります。
溝口:山口組は戦う相手を間違えていたということだね。
【プロフィール】
溝口敦(みぞぐち・あつし)/1942年、東京浅草生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション大賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『ヤクザ崩壊 侵食される六代目山口組』(講談社+α文庫)など著書多数。
鈴木智彦(すずき・ともひこ)/1966年、北海道生まれ。フリーライター。日本大学芸術学部写真学科除籍。ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めた後、フリーに。主な著書に『サカナとヤクザ』『ヤクザときどきピアノ』など。
※週刊ポスト2024年1月17・24日号