Dさんは彼女の献身的なサポートを受け、左腕の懸命なリハビリに励むようになる。
〈2月下旬に人工透析が終わると、Dさんは集中治療室を出て一般病棟に移った。そして3月中旬からリハビリがスタート。1か月後には、杖をついて歩けるまでに回復した。
だが、左腕は指先までピクリとも動かない。4月になって彼は、本格的なリハビリを受けるために尼崎市内の関西労災病院に転院した。
そこでは腕に細いひもをつけて、それを上下左右に引っ張って、腕を動かす訓練を行った。しかし腕はだらんと垂れたまま。しまいには腕の重みで肩が脱臼してしまった。
「見えない道を、とぼとぼ歩いているような毎日でした」(Dさん)
やっと変化が現れたのはリハビリから3か月が過ぎた7月19日のこと。渾身の力を込めると、こぶしが3センチほど浮いた。さらに力を込めると、肘が垂直に持ち上がり、指先もわずかに動いた。
「動いた、動いた!」Dさんも、E子さんも手を取り合って、こう叫んでいた〉(同前)
その後、退院したDさんはパソコンで毎日キーを叩き、リハビリを続けたという。