「現在、引き取ったSLは人吉駅前の駐車場で仮の展示保存をしています。仮の展示保存ではありますが、風雨から車体を守るために仮設のテントを張っています。今後は正式な展示スペースを確保して格納庫も整備することを目指していますが、具体的なことは決まっていません」(同)
人吉市ではSL人吉の勇姿を長らく伝えるために、最終的には「空気圧縮による動態保存を考えています」という。
飯田市は引き取り手を募集中
大井川鉄道を皮切りにSLは沿線外から利用者を呼び込むという観光列車の役割を色濃くしたが、観光列車として再び線路を走ることができた車両は多くない。
最盛期の国鉄はSLを4000両保有していたと言われる。その多くは廃車となり解体されたが、幸いにも各地の自治体や博物館、地元団体の有志によって引き取られた車両もある。引き取られた車両は駅前広場や公園といった公共スペースに展示保存された。
保存展示されたSLは国鉄OBを中心とするボランティアスタッフなどによってメンテナンスを施されたり、自治体が維持管理に努めてきた。しかし、近年はボランティアスタッフが高齢化したことによってメンテナンスが行き届かなくなっている。自治体財政の逼迫という理由もSL保存には逆風で、最近ではメンテナンスされないまま放置されることは珍しくない。
長野県飯田市の扇町公園に保存展示されていたSLも維持管理が難しくなったことから、このほど引き取り手を募集することになった。
「扇町公園のSLは、1972年に地元のライオンズクラブが国鉄から無償譲渡された車両で、2024年6月にライオンズクラブから市に無償譲渡されました。すでに50年以上が経過して車両の老朽化も激しく、雨除けの屋根などもないので維持管理も行き届いているとは言い難い状況でした。そのため、車両の劣化は激しく塗装も剥げ落ちていました。このまま同地で保存することは難しいと判断し、引き取り手を募集することにしたのです」と話すのは、飯田市商業観光課の担当者だ。
SLが展示されている扇町公園は、飯田市動物公園と隣接した場所にある。週末や長期休暇には多くの人出でにぎわう場所なので、動物園との相乗効果も期待できそうだが……。