浅野:それから、シェーキーズでピザを食べて。そんな女子高生でした。
横山:当時、流行っていた歌舞伎町のディスコなんかには、足を運んだりしなかったんですか。
浅野:プライベートで通うことはありませんでしたけど、新曲のキャンペーンでは、当たり前のように深夜のディスコに出演していましたよ。まだ高校生だったのに(笑)。
横山:さすがディスコ歌謡の女王! 浅野さんが高1の4月にリリースした『セクシー・バスストップ』は筒美京平さんがジャック・ダイアモンドなる外国人風の変名で作曲した珠玉の名曲です。
浅野:おかげさまで、私の人生で最も売れたシングルとなっております(笑)。オリコンでは12位まで上昇いたしました。
横山:しかし、このレコードのジャケット、何でまた、写真じゃなくってイラストなんですか。当時の浅野さんといったら、10代とは思えない、抜群にセクシーなビジュアルが売りだったはずなのに。
浅野:女性の反感を買うことを恐れたんでしょうか。「髪を切れ」と命じられたのも、この頃でした。
横山:突然短髪に変えたので、驚きましたよ。
浅野:見た目が大人びていたからか、テレビなどで男性アイドルと並ぶと、その方のファンたちが嫌悪感を催すらしいんです。よく、カミソリ入りの手紙とか来てましたよ。
横山:それで、フォトジェニックなルックスをアピールしない戦略が取られたと。謎が解けました。
浅野:この年、立て続けに発売された『セクシー・バスストップ』『ハッスルジェット』『ムーンライト・タクシー』は、ディスコサウンド3部作と呼ばれました。すべて作曲は筒美京平先生、そして、ジャケットはいずれもイラストでした(笑)。
横山:浅野さんのダンサブルなナンバー、本当に素敵ですよね。
浅野:まあ、じっくりバラードを歌って、聴いていただくタイプじゃありませんでしたから(笑)。
(後編へ続く)
【プロフィール】
浅野ゆう子(あさの・ゆうこ)/1960年、兵庫県生まれ。1974年に『とびだせ初恋』で歌手デビュー。同年のドラマ「太陽にほえろ!」で俳優デビュー。1980~1990年代のトレンディドラマのブームを担い、1995年に公開の映画「藏」では第19回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞。主な出演作はドラマ「君の瞳をタイホする!」、「大奥」、大河ドラマ「功名が辻」など多数。
横山剣(よこやま・けん)/1960年、神奈川県生まれ。1981年にクールスRCのヴォーカル兼コンポーザーに抜擢されデビュー。1997年春、地元本牧にてクレイジーケンバンド(CKB)を結成。これまでに数多くのアーティストにも楽曲を提供し、自他共に認める東洋一のサウンドマシーンとして活躍。ニューアルバム『火星』が発売中。火星ツアーで精力的に全国行脚中。
構成/下井草秀 撮影/朝岡吾郎
※週刊ポスト2025年1月31日号