横山:あのファンキーなステージ、忘れられません。当日は、どんな気持ちで歌っていたんですか。
浅野:普段の学園生活では口酸っぱく高校生らしくせよ、と諭されているのに、文化祭では芸能人として振る舞うことになる。何か矛盾してるんじゃないかなあ……と思いましたけどね(笑)。
横山:卒業式も中野サンプラザでしたよね。
浅野:マスコミのカメラが並んでいる卒業式って、他にはありえない(笑)。
横山:ちなみに、入学式は昔の渋谷公会堂でした。どちらも、コンサート会場として親しんでいた場所だったから、何だか不思議な気分でしたよ。
浅野:改めて振り返ると、ずいぶん風変わりな学園生活だったのかも。
一芸に秀でていれば、それでいい
横山:堀越を卒業した浅野さんは、歌手のみならず、さまざまな分野へと翼を広げていきます。
浅野:いえ、実際のところは、迷走が続いていました。周囲のスタッフが持ってきてくれた、いろんなタイプの楽曲にトライしたものの、なかなか結果には結びつかず……。
横山:僕は20歳の浅野さんがリリースした『半分愛して』というシングルが大好きなんです。AORサウンドにのせたウィスパー風のヴォーカルにしびれましたね。
浅野:マニアックな楽曲をご存じですね。あまり売れなかったのに(笑)。
横山:作詞は康珍化さん、作曲は林哲司さん。現在のシティポップブームにおいて鉄板とされる黄金コンビです。海外のクラブでも、この曲の人気が高まっているんですよ。
浅野:初耳です! じゃあ、TikTokか何かで歌ってみたら、結構な反応があったりするのかしら。
横山:ぜひ! 浅野さんが俳優一本でやっていくと決意したのは、いつのことだったんですか。
浅野:20代中盤ですね。いろいろな取材で「あなたの本業は何ですか」と聞かれることが増えた頃かなぁ。歌手なのかタレントなのか、それともモデルなのか、と問われた時、私には、はっきりと返すことのできる答えがなかったんです。
横山:マルチな才能の持ち主ならではの悩みとも言えそうですけどね。